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特定の人に財産に遺すには、相続以外の方法として「遺言による贈与(遺贈)」と「死因贈与」があります。この2つは「死をきっかけに財産がある人に移転する」という点では似ていますが、意味は大きく異なります。みていきましょう。

「遺言」と「死因贈与」が抵触したときの対処法

なお、遺言と死因贈与が抵触することがあります。

 

遺言書に「Aに甲土地を相続させる」と書いてあるのに、Bが「死因贈与契約で甲土地をもらうことになっていた」と主張するといったケースです。このようなとき、遺言と死因贈与のどちらが優先するのでしょうか。

 

まず考えたいのが遺言の有効性です。遺言書が民法に則った形で遺されており、有効でなければ死因贈与が優先されます。

 

また死因贈与についても死因贈与契約書が存在していることが必要です。遺言と死因贈与いずれも有効だとするなら、次に検討すべきは「どちらの日付が新しいか」になります。遺言をした後、その遺言に抵触するような死因贈与が行われたのなら、遺言を撤回したとみなす民法上の規定があります(民法第1023条)。

 

そして死因贈与契約は、原則として遺贈に関する規定が準用されます(民法第554条)。先ほどの規定と併せて考えると、死因贈与をした後に遺言をしたようなケースでは死因贈与契約を撤回したものと考えることができるのです。

「遺言」と「死因贈与」…どちらを選ぶべき?

「財産をあの人に遺すなら、遺言と死因贈与、どっちがいいんだろう」と迷われるかもしれません。どちらがいいかは状況によって異なります。

 

「相手に渡す財産を知られたくない」と思うなら遺言による贈与の方がよいでしょう。

 

人によっては、いずれ多額の財産が手に入ると分かった時点で散財したり借金したりするかもしれません。そのような事態を防ぎたいのなら、ひっそりと作成して財産の承継先を指定できる遺言の方がよいといえます。

 

また、あげる財産が不動産で、相手が確実に取得すると見込めるなら、遺言の方がよいかもしれません。名義変更の税負担や手間が減らせるからです。

 

しかし、「贈与する財産の内容を相手に知っておいてほしい」「自分の死後、確実に財産を相手に渡るようにしたい」と思うなら死因贈与がよいでしょう。亡くなった人が周囲に何も知らせずに遺言を遺すと、相続人や受遺者は期待していた財産を取得できなかったり、逆に欲しくない財産を取得したりすることになります。

 

また、死因贈与は受贈者が承諾の上、契約書に署名捺印する必要があります。こういった行為を通じて、受贈者としてはっきりとした自覚をもちやすくなります。

 

ただし、名義変更にあたって手間やコストがかかることも伝えておいた方がよいでしょう。

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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