(※写真はイメージです/PIXTA)

裁判に立ち会う弁護士のように、不動産業者も顧客の売買・賃貸借取引に立ち会って交渉を成立させています。しかし、不動産業界では売る(貸す)側と、買う(借りる)側両方の仲介を並行して行う「両手取引」が認められています。矛盾するようですが、多くの顧客から信頼される会社なら、結果的に両手取引となるケースもあるかもしれません。そんなとき、不動産業者はこの矛盾をどう切り抜けているのでしょうか?

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    街の不動産屋は、一度きりの仲介手数料より…

    街の不動産屋の多くは賃貸住宅の仲介が専門です。「入居者様第一主義」を掲げて、賃貸住宅を探している顧客に対しきめ細やかなサービスを提供します。希望にあった物件をたくさん紹介してくれますし、契約条件の交渉もしてくれるなど“至れり尽くせり”なイメージがあります。

     

    しかし、いざ入居すると、今度は大家側へ“至れり尽くせり”になるのです。街の不動産屋の仕事は入居者募集とその契約業務、そして入居後の建物管理です。入居者からは仲介手数料が得られますが、それは新規契約時の一度きりです。ビジネス全般にいえることですが、単発的な収入より定期収入の方が経営は安定します。

     

    すなわち、街の不動産屋は一度きりの仲介手数料よりも、毎月定額で得られる賃貸管理料の方がありがたいのです。そのため、多くの不動産業者は入居者よりも大家を“上客”として歓待します。

    不動産業者は誰の味方か?

    世間では、不動産業者はしたたかという印象を持たれているようですが、その要因は不動産売買における両手取引や、大家との密接な関係に所以すると思われます。アメリカなどの諸外国では両手取引そのものが禁止されており、売主・買主それぞれに別業者がつくのが当たり前になっています。

     

    残念ながら日本の不動産業界には、売主か買主、または賃貸人(大家)か賃借人(入居者)のどちらか一方だけに付いて安定収益を得ていく土壌ができていません。それに加え、値引きなどの条件交渉を“意気”としない、日本人ならではの商取引に関する考え方もネックになっています。

     

    不動産取引においても、売主から提示された価格や、大家が希望する家賃をすんなり受け入れて契約してしまう顧客がほとんどです。条件交渉の機会が少ないため、現行スタイルに疑問を呈する声が少なく、問題を改善する動きが起こらないままなのです。

    大家と入居者の板挟み…その後

    入居者との交渉は難航しました。この物件は暮らしやすく、できることなら終の棲家にしたいと考えていたこと、今年で定年退職することもあり、いまよりよい条件の転居先を見つけることは難しいことを理由に拒否の姿勢です。

     

    そこで、「では、買い取りますか?」と提案しましたが、5,000万円は捻出できないとの返事でした。また「ここを収益物件と考えると表面利回り6%以上は必要です。そうなると家賃は月額25万円以上に値上げしなければならなくなりますが、支払えますか?」とたたみかけると、家賃6ヵ月分相当額の立ち退き費用と、引越費用の提供を条件に退去を受け入れてくれました。

     

    残された仕事は、無職高齢者を受け入れてくれる賃貸住宅を見つけることと、この物件を5,000万円で売却成約させることです。

    まとめ

    不動産業と弁護士業は似ているところがあります。しかし不動産売買には「両手取引」など商取引上矛盾した部分もあり、そういった矛盾を解消して取引成立させるのが不動産業者の腕の見せ所です。

     

    売る(貸す)側と買う(借りる)側、二者の合意点を見つけることは難しいかもしれませんが、双方の利益と平穏な生活を守ることが不動産業者の使命です。

     

    不動産業者は物件案内をしているだけでなく、顧客のさまざまな経済・生活状況を鑑みながら業務を遂行していることを知っていただきたいと思います。

     

     

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    ※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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