インテリ高齢者ほど「難解な金融商品」のカモに…
生徒:ファンドラップ以外に危ない商品はありますか?
先生:対面営業中心の証券会社で多いのが、個別株式の回転売買だね。
生徒:売買が回転するのですか?
先生:回転売買というのは、個別株式を売ったり買ったり、売買が繰り返されて、売買手数料をドッサリ取られてしまうことだね。高齢者は、どの株式を買えばいいかわからないので、若い営業マンを信頼し、言われるがままに売買してしまうんだ。
生徒:うちの父も放っておくと、いいカモになりそうですね…。
先生:あと、数年前に問題になったのが、銀行が熱心に販売していた毎月分配型の投資信託だね。「毎月、分配金が出るので小遣い代わりにも使える」と言われて買うんだけれど、利益が出たからお金が分配されるのではなく、元本の一部が取り崩されてお金が分配されるというもの。解約すると当然に元本が目減りすることになるんだ。
生徒:えーっ、そんな商品があったんですか!?
先生:あと、バイナリーオプションや商品先物取引も危ないね。これは、レバレッジと言って、100万円を元手に1000万円規模の取引などが可能となるから。利益が出ると大儲けできるけど、損失が出るとボロ負けになるんだよ。
生徒:ほとんどギャンブルですね!
先生:こういった複雑な金融商品は、頭がいい人がターゲットになりやすので、注意が必要なんだ。例えば、原油の先物取引。外国の戦争で石油価格が上がれば、「いま原油価格が上がっていますね。原油先物に投資すれば、利益が出る可能性が高いですよ。ニュースで報道されていましたよね!」と提案するんだ。こういう提案は、毎日情報収集に励んでいる知的エリートのプライドを刺激するようで、ついつい取引に手を出してしまうんだね。しかし、価格の上昇がニュースになる頃には、すでに価格は最高値に達していて、買った直後に価格の下落が始まるケースが多いんだよ。
生徒:どれも怖いですね! 結局、高齢者は、退職金をどのように運用すればよいのでしょうか?
先生:投資する金額は、リスク許容度に応じて決めなければいけない。株式へ投資するとすれば、短期的には3割から4割の損失が出ることは当然に想定されるから、それに耐えられるかどうかが問題だね。ほとんどの高齢者にとって、3割から4割の損失は致命傷になるだろう。そうだとすれば、株式への投資を控えて、国債や銀行預金で運用するほうがいいね。
生徒:なるほど、高齢者は、なるべくリスクの低い金融商品で運用すべきだということですね。父に伝えておきます!
大貫 友久(おおぬき ともひさ)
税理士
吉岡マネジメント・グループ/税理士法人日本会計グループ 代表社員・理事長