会社で働きながら老齢厚生年金を受けると、年金が減額
ある専門家のところに相談者がやってきました。定年が70歳まで延長されたため、めいっぱい仕事をするつもりだといっています。そこにプラスして年金を受給すると、どれくらい豊かになれるのかと、目をキラキラさせていましたが、実際のところ、現実はそう甘くなく…。
相談者:うちの会社は、定年が70歳になっていて、老後も長く働き続けることができる制度があるんです。私はいまの仕事が大好きなので、70歳まで働き続けるつもりなんですよ!
専門家:そうですか。人生100年時代と言われていますから、長く働くのはいいことですね。
相談者:年金は65歳から、繰り上げ受給すれば60歳からもらえますよね。60歳を過ぎて、会社の給料に加えて年金をもらうことができれば、生活はラクになりそうですね!
専門家:それが、そんなにおいしい話はないのです。たくさんお給料をもらっていると、年金が減らされてしまうからです。
相談者:えーっ、年金が減らされるんですか!? それはひどい話です!
専門家:実は、60歳を過ぎても会社で働き続けながら年金を受け取る場合、老齢厚生年金が減額されてしまうのです。これを在職老齢年金制度といいます。そもそも厚生年金に加入していない自営業者には関係ない話です。厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける60歳以上の方にとって重要な話ですね。会社員として働き続けるつもりならば、覚えておくとよいでしょう。
相談者:どれくらい年金が減額されるのでしょうか?
専門家:計算式はそれほど難しくないから、簡単にご説明しましょうか。60歳以上の方が、働きながら年金をもらうと、毎月どれくらいお金をもらうか、計算するのです。年金と給与ですよね。毎月の年金のことを基本月額といいます。1年間の老齢厚生年金を12で割った金額ですね。毎月のお給料のことを、総報酬月額相当額といいます。1年間の給料とボーナスの合計を12で割った金額ですね。これらを合計して47万円を超えると減額されるのですよ。この47万円という金額が重要なので、覚えておきましょう。
【基本月額】
1年間の老齢厚生年金を12で割った金額(加給年金額および経過的加算額は除く)
【総報酬月額相当額】
1年間の給料とボーナスの合計を12で割った金額
相談者:毎月47万円ですか…。自分にはそんなに稼げると思えませんが。
専門家:いや、しっかり年金をもらうとすれば、フルタイムで働くと、それくらいになるケースは多いですよ。47万円以下ならば減額されませんが、47万円を超えますと、超えた部分の2分の1が減額されてしまうのです。
相談者:超えた部分の2分の1というのは、具体的にどのように計算されるのでしょうか?
専門家:例えば、老齢厚生年金の基本月額が10万円、総報酬月額が41万円だったとしましょう。これらを足すと51万円です。これは47万円という金額を4万円だけ超えています。この4万円の2分の1、すなわち毎月2万円の老齢厚生年金が減額されることになるのです。
相談者:えーっ、それは厳しいですね!
専門家:まぁ、それでも十分な収入があるから、そんなに厳しいものではないですよ。老齢厚生年金を2万円くらい減額されたとしても、これ以外にも老齢基礎年金を6万円ちょっと受け取っているはずですから、減額後の8万円と会社で稼いだ41万円と6万円で、毎月55万円くらいの収入になりますから。
相談者:それならば、定年後に会社で働くとしても、厚生年金保険に加入しなければ、減額されずに普通に受け取ることができませんか?
専門家:それが、ダメなんです。年金を受けている方でも、フルタイムとして会社で働き続けるならば、70歳まで厚生年金保険への加入が義務付けられているんです。短時間勤務にすれば、加入対象から外れるのですが。