退職金2000万円、みるみる融けて…投資に失敗した高齢者の「悲惨な末路」【税理士が解説】

退職金2000万円、みるみる融けて…投資に失敗した高齢者の「悲惨な末路」【税理士が解説】
※写真はイメージです/PIXTA

大企業勤務のサラリーマンの退職金は2000万円前後。会社を退職した60代の多くは、一生涯で保有する貯蓄額が最も大きくなっています。たくさんのお金をさらに増やそうと試み、ハイリスクな投資にチャレンジする人もいますが、実際は、損失を出して老後資金まで失い「こんなはずでは…」と嘆く人も多いのです。今回は、高齢者の投資について考えます。専門家が解説していきます。

資産運用の未経験者が、急に大金を持つと「危ない」

ある学生が、老後資金の問題に詳しい先生のところへ訪れました。定年退職した父親が金融機関に資産運用の相談をしているらしく、高齢者の老後資金の運用に関心を持ったのです。しかし、先生の説明を聞いてみると不安がつのって…。

 

生徒:昨年、うちの父が65歳で会社を退職したんです。退職金をもらったようで、銀行や証券会社の窓口へ行って資産運用の相談をしているようなんですね。父はどのように運用するのが正解なのでしょうか?

 

先生:いままで資産運用の経験が少ない人が、突然大きなお金を持つと、投資で一気に増やそうと意気込んでしまうケースが多いんだ。君のお父様も同じケースかもしれないから、注意が必要だ。まあ、退職金の運用のことを銀行や証券会社で相談するのは、赤ずきんちゃんがオオカミに人生相談しているようなものだね。

 

生徒:えっ!? なぜですか?

 

先生:金融リテラシーの低い高齢者は、銀行や証券会社の格好のターゲットなんだよ。とくに、銀行はお客様の預金口座の入出金をすべて把握しているから、退職金みたいな大きな入金があると、すかさず金融商品の提案を行うんだ。

 

生徒:それでも、お客様の利益を考えて、金融商品を提案するのではないですか?

 

先生:いや、そんなことはあり得ないね。銀行や証券会社が勧める金融商品は、お客様に最適な商品ではなく、自分たちが儲かる商品だ。金融庁は、平成27年度のレポートにおいて、「金融機関においては、短期的な利益を優先させるあまり、顧客の安定的な資産形成に資する業務運営が行われているとは必ずしも言えない状況にある。」と指摘していたんだよ。

販売手数料・運用手数料の高い商品を提案されがち

生徒:具体的に、どんな金融商品が提案されるのでしょうか?

 

先生:販売手数料や運用手数料が高い金融商品だね。よくある話は、アクティブ・ファンドや米ドル建て仕組債と劣後債、あとはファンドラップなどだよ。

 

生徒:ファンドラップとは何ですか?

 

先生:ファンドラップというのは、証券会社に資産運用をお任せするサービスだね。預けたお金は、複数の投資信託に投資されるんだけど、アクティブ・ファンドのような投資信託に投資され、手数料がバンバン抜かれてしまうんだ。つまり銀行や証券会社にとっては、手数料がとても高く、儲かる商品なんだよ。

 

生徒:どれくらい手数料が高いのでしょうか?

 

先生:管理手数料が年間1.5%程度かかるだけでなく、投資をお任せする手数料として年間1.5%程度かかるので、預けたお金は毎年3%ずつ減少していくんだ。10年間運用したら確実に3割は消えてしまうね。1,000万円を投資すると10年後には300万円を取られてしまうということだ。

 

生徒:そんな商品、誰が買うのですか?

 

先生:これを営業担当者が提案するとき、「お客様は自分で資産管理する手間が省けます」とか、「プロのコンサルティングが受けられます」と言うんだ。手数料の高さは曖昧にして、手数料を上回る利益が出るように説明するんだね。

 

生徒:そんな説明されたら、うちの父はファンドラップを買ってしまいそうですね。私自身の場合は、インターネット証券で取引していますから、営業マンから対面のセールスを受けてファンドラップを買うことなんて、ありえないのですが。

 

先生:そうだね。2020年に投資信託協会が公表したデータによれば、金融機関に勧められて投資信託を買ったという人は全体の40%なんだ。しかし、高齢になるほどその割合が高まっていて、60代で50%、70代で60%なんだ。つまり、若い人は金融機関を頼っていないけれど、高齢者は金融機関を頼って取引しているというのが現状なんだ。

 

生徒:確かに、うちの父も若い女性には弱くて、若い営業ウーマンに勧められた商品は、何の疑いもなく買ってしまいそうです…。

 

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