(※写真はイメージです/PIXTA)

これまでの連載では、慢性疾患は、慢性炎症が原因であるということを話してきました。慢性炎症の原因には、ミトコンドリアから発生する活性酸素や、環境中の環境毒素(ゼノバイオティクス)、腸内環境が乱れた状態(腸管ディスバイオーシス)などがあります。そして、もう一つ、今まで触れてこなかった重要な原因があります。それが、高血糖なのです。しかし、高血糖については、情報が一部で混乱し正しく伝えられていないことがあります。今回は、高血糖の何がリスクで、何がリスクでないのかについて説明します。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

高血糖の原因は、糖質ではなく「インスリン抵抗性」

よく勘違いをされているのですが、血糖が上がるのは炭水化物や甘いものを摂り過ぎたからではありません。通常の場合は、消化管から吸収されたブドウ糖は、インスリンの作用で細胞内に取り込まれるので、一定の範囲以上に血糖が上がることはありません。

 

では、高血糖症はどうして起こるのでしょうか?

 

糖質を摂って血糖が高くなる場合には二つの可能性があります。一つ目は糖質を身体の細胞内に取り込ませるインスリンの分泌力が低下している場合。二つ目は、インスリンはきちんと分泌できているのにインスリンの効きが悪くなっている場合です。

 

一つ目については、特に日本人では欧米人と比べて、インスリンの分泌が低下しているかインスリンの出るタイミングが遅れていることが多いです。インスリンの分泌能が低い人が、それまで糖尿病を発症しなかったのは、インスリンの感受性がむしろ高いためだと考えられます。

 

二つ目については、欧米に多いタイプで、「インスリン抵抗性」と言われます。インスリンの感受性が低下している状態です。

 

たとえば、正常の人で血糖を140から100まで下げるのに5のインスリンが必要であるとしましょう。インスリンの効きが悪くなるというのは、同じだけ血糖を下げるのに5のインスリンだけでは足りなくて、10も20も必要になるということです。逆にいうと、通常の人と同じだけの5しかインスリンが出なければ、血糖は100まで下がりません。つまり、高血糖が起こるということです。

 

これはインスリンの異常ではなく、細胞にあるインスリン受容体の反応が悪くなっていることが原因です。つまり、炭水化物を食べて血糖が高くなるのは、食べ物が原因ではなくインスリン抵抗性が原因なのです。

 

「インスリンの分泌が低下しているか遅延している人は、糖尿病の発症前はインスリンの感受性が高い」と言いましたが、このような人は、インスリンの抵抗性が合併することがきっかけとなって糖尿病の状態になるということです。

 

■健常な人が「血糖の上がりやすい食品」を摂っても、高血糖にはならない

ある食べ物を食べたときの血糖の上がりやすさを「グリセミックインデックス(GI)」と言います。GIは、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血糖値の上がりやすさを計ったものです。

 

もともとは、糖尿病の人が炭水化物を摂るときに、できるだけ血糖を上がりにくくするために考案された指標です。

 

ブドウ糖を100として基準とした場合、GIが70以上の食品を高GI食品、56~69の間の食品を中GI食品、55以下の食品を低GI食品と定義しています。

 

インスリン抵抗性のない健常な人がGIの高い食事を摂ったからといって、いきなり高血糖症になるわけではありません。インスリン抵抗性のある人では、血糖が上がりやすいので、できるだけGIの低いものを食べましょうということです。それと、健康な人とでは同じように考えることはできません。

 

では、次にインスリン抵抗性があり、血糖が上がることがどのように私たちの身体に影響を与えるのかについて見ていきましょう。

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自己治癒力を高める医療 実践編

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