前回は、「決算書が整っていない会社」がM&Aで売れない理由を説明しました。今回は、M&Aの会社売却代金にかかる税金を軽減する方法を見ていきます。

M&Aの売却代金には高額な税金がかかってくる!?

高く売ることと同時に大切なのは、タックスマネジメントです。せっかく高い金額で売却できても、売却代金に高額な税金がかかってしまっては、オーナー経営者の手元に残る資金は減ってしまいます。できる限り税金を安くする工夫も欠かせません。

 

税金を安くする手段のひとつに役員退職金を利用する方法があります。M&Aといっても、その手法によって、適用される税金が異なります。また、今後の課税を考えれば、株式を子どもに事前移転しておくのも有効でしょう。

 

株式譲渡の場合には、株主が個人か法人かによって税金も分かれます。個人の場合には、売却利益に対して所得税15%、住民税5%の計20%の譲渡所得税がかかります。ちなみに2013年から37年までは復興特別所得税(基準となる所得税額の2・1%)が別途課されます。

 

一方で株主が法人の場合には、売却利益に対する約36 %の法人税を支払うことになります。事業譲渡の場合は売却益は法人の利益となりますから、やはり売却利益に対して約36%の法人税等が発生します。さらに消費税の8%も負担することになります。

「第三者割当増資」と組み合わせて節税した事例

第三者割当増資では税金は発生しません。株式譲渡の場合であれば、役員退職金を利用することで節税をすることが可能です。

 

たとえば、株式の譲渡代金が2億円、株式取得金額1000万円、株主はオーナー経営者個人で勤続年数が30年の場合で考えてみましょう。

 

この場合の所得税額は約3859万円となり、手取り額は約1億6141万円となります。これを株式譲渡代金1億6000万円と退職慰労金4000万円に分けて受け取るとどうなるでしょうか。

 

株式譲渡代金にかかる所得税は約3047万円に減少し、退職慰労金にかかる税額は約392万円で合計3439万円の税金ですみます。手取り額を約429万円増やすことができるのです。

本連載は、2015年9月2日刊行の書籍『財を「残す」技術』 から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

財を「残す」技術

財を「残す」技術

齋藤 伸市

幻冬舎メディアコンサルティング

成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければいけない。そのときに課題になるのが、事業とお金をいかに残し、時代に受け継ぐかである。 保険代理店業を主軸として、オーナー社長の資産防衛と事業承継をコンサルティ…

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