
新型コロナウイルスの感染拡大下で、ゼロ・コロナ政策を維持する中国は非常に厳しいロックダウンを実施しています。ロックダウンを大きな理由として、中国経済は非常にもたついている状況です。中国経済のもたつきというのは、日本経済に非常にインパクトが大きいもの。ウクライナ情勢も極めて心配なものですが、中国にもしっかりと目を向けておきたいところです。香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏が解説します。
経済政策が「ちぐはぐ」になってしまっているワケ
以前から、贅沢をし過ぎない『共同富裕』社会の実現(=外需から国内の需要・消費を中心に回していく経済への移行)を目指してきたため、成長率はゆるやかに下がってきていましたが、現在は、これまでの数字の落ち方以上に苦しんでいると言わざるを得ません。
金融緩和策を取りたいところですが、国際商品市況の上昇を受けインフレ率が上昇しているため目立った策は取りにくい現状にあります。
従来、中国当局は政策をうまく組み込んで相乗効果で景気を拡大させてきましたが、今回はゼロ・コロナ政策を維持しているため、かなりちぐはぐになってしまっている印象です。
3月の全人代から、委員会が開かれる度に「経済政策をやるぞ」という話は出てくるのですが、残念ながら具体的な政策が出てきていません。習近平国家主席の3期目入りを巡って、さまざまな駆け引きがあるのかもしれません。
本来、ゼロ・コロナ政策を転換すれば経済的にはかなり助かるはずですが、中国当局としては「まだそこまでの段階にはない」ということなのでしょう。
「米中対立」や「ロシアへの対応」といった対外的な問題もありますが、内部だけをとってみても実際はかなり苦しい事情があります。
中国経済のもたつきはアジア、そして日本へ大きなマイナスの影響を与えかねません。ぜひ注視していただきたいと思います。
■動画でも解説『「中国経済 ゼロ・コロナ政策で試練に直面」日本への影響も大』
長谷川 建一
国際金融ストラテジスト <在香港>