(※写真はイメージです/PIXTA)

25年以上『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読み続け、97冊以上を読破した渡部清二氏。同氏は「四季報を読むか読まないか。その差によって、有望企業を見つけられるかどうかが決まる」といいます。『会社四季報』といえば、約2000ページに及ぶ大著。一見、難しい情報ばかり載っていそうに思われます。ところが、実はたった6ヵ所を見るだけで、どんな人でも、これから株価がぐんぐん上がる優良企業を探すことができるのです。“四季報の達人”が、誰も知らない超優良企業を見つける「読み方」を伝授します。

〈Jブロック〉売上と利益の推移

Jのブロックには、だいたい過去3年または5年の年間の営業成績、今期・来期の四季報独自の予想が書かれています。その企業の損益計算書(PL)から重要な数字が抜粋されています。

 

ここではJブロックの読み方を押さえておきましょう。

 

【業績】は、上から順に、前々期、前期、今期(予想)、来期(予想)と、縦に時系列順に並んでいます。灰色の部分が予想、灰色の部分より上が実績です。横に、左から順に売上高、営業利益、経常利益、純利益…と並んでいます。

 

注目するポイントは売上高と営業利益です。売上高を時系列で見比べることで、企業の成長性がわかります。売上高の伸びを「増収率」といい、これこそが成長性であり、株価の値上がりが期待できる「中小型成長株」を探す際の重要な手がかりになります。営業利益が伸びることを「利益成長」といい、こちらも重要ですが、本質的な成長は増収率を見ます。売上高は「顧客数×単価」で表せるため、増収率が高いときは、顧客数が増えているか、単価が上がっているといえるので、成長力があると判断できます。

 

また、各期の数字を横に見て、売上高と営業利益を比べると、どれくらい売り上げて、どれくらいの利益を残しているかがわかります。これは稼ぐ力を把握するための情報で、「優良株」を見つけるポイントとして注目します。

 

Jブロックで、もう1つだけ押さえておきたいのは、右から2番目の「1株益」。これは、1株当たりの利益額で、EPS(Earnings Per Share)といいます。投資したお金がどれくらいの利益を生んでいるかを表すもので、数字が大きいほど稼ぐ力があると判断できます。後述する株価収益率(PER= Price Earnings Ratio)を算出するときに使います。

 

出所:渡部清二著『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SBクリエイティブ)より
[図表5]Jブロックで売上と利益の推移を見る 出所:渡部清二著『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SBクリエイティブ)より

〈Nブロック〉株価の方向性と変化

Nブロックに載っているのは株価チャートと株式指標。

 

株価チャートは、株価の値動きを表し、株式指標は、割安か割高かといった視点で現在の株価がどれくらいの水準にあるかを知るデータです。株を売買するタイミングを計るために重要な情報です。

 

出所:渡部清二著『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SBクリエイティブ)より
[図表6]Nブロックで株価の方向性と変化を知る 出所:渡部清二著『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SBクリエイティブ)より

 

まずはチャートを構成している重要なパーツを理解しておきましょう。

 

チャートは、縦軸が株価、横軸が時間。四季報のチャートでは、3年強分(41ヵ月)の値動きが確認できます。

 

チャート内の1本1本の縦棒はローソク足といい、一定期間の値動きの幅を表します。

 

四季報のチャートで使用しているローソク足は「月足」といってその月の動きを1本にまとめたもので、月初より月末の株価が上がっていれば白い棒(陽線)、月初より月末の株価が下がっていれば黒い棒(陰線)となります。

 

チャート上の実線と点線の曲線は「移動平均線」といいます。各ローソク足の終値(月末の株価)の平均を計算したもので、実線は12ヵ月(12本)、点線は24ヵ月(24本)の平均です。移動平均線が上向きなら株価は上昇傾向、下向きなら下落傾向と判断できます。

 

ローソク足が移動平均線より上にある場合、過去に買った人の平均価格よりもいまの株価のほうが高いということですから、いまの株主は基本的には儲かっている人が多いと判断できます。ローソク足が移動平均線より下にある場合はその逆で、いまの株主は基本的には損している人が多いと判断できます。

 

チャートの見方を押さえたら、値動きの分析を行います。

 

まずは方向性を確認しましょう。

 

株価は、企業に対する株式市場の評価です。市場の投資家は、誰もが「上がる」と思って株を買いますから、有望だと思われている株は上がり、イマイチと思われている株は下がります。つまり、上向きか下向きかを見ることで、市場がその企業をどう評価しているかがわかります。

 

方向性は、直近1年くらいの値動きを見るのがよいでしょう。この期間で、陰線より陽線が多いか、移動平均線が上向きであれば、市場は「上がる」と評価し、株価は上昇傾向(上昇トレンド)にあると判断できます。逆に、陽線より陰線が多いか、移動平均線が下向きの場合は、市場は「下がる」と評価し、株価は下降トレンドにあると判断できます。

 

基本的な考え方として、成長力重視で買う場合には、上昇トレンドのタイミングで買います。この買い方を、流れに順応して買うという意味で「順張り」といいます。一方、株価が安いときや、下落したときを狙って買う場合には、下降トレンドのタイミングで買います。この買い方を、流れに逆行して買うという意味で「逆張り」といいます。

 

「中小型成長株」は、高く買って、さらに高く売ることによって利益を出すという順張りが一般的ですが、株価が何倍にもなるものは、より安く買うことが重要なので、逆張りになることが多いものです。「業績回復株」や「バリュー株」を狙うのであれば、逆張りがよいでしょう。逆張りは、安く買って、高く売ることによって利益を出します。

 

次に変化を見ます。変化とは、株価の方向や勢いが変わることです。

 

株価は、高値、安値をつけながらつねに上下します。ずっと上がり続けたり、ずっと下がり続けたりすることはなく、どこかでトレンドが変わります。トレンドの変化として、上昇から下落に変わるもの、下落から上昇に変わるもの、ずっと横ばいだった株が、突然上昇し始めることもあります。その予兆は、チャートに現れます。

 

たとえば、陰線より陽線が多い上昇トレンドのチャートで、急に陰線が連続するようになる、急角度で上がっていた移動平均線の角度が緩やかになるといった変化は、下降トレンドに変わる予兆と見ることができます。

 

また、移動平均線の実線は直近12ヵ月の平均、点線は24ヵ月の平均ですから、期間が短い実線のほうが新しい情報といえます。

 

そう考えると、市場が「この株は買える!」と評価し始めた場合、24ヵ月の移動平均線より先に、12ヵ月の移動平均線が上がります。その結果、12ヵ月の移動平均線が、24ヵ月の移動平均線を下から上に突き抜けることを「ゴールデンクロス」といい、これが株価が安い位置にいるときに起きると、買いのタイミングとされています。逆に、12ヵ月の移動平均線が、24ヵ月の移動平均線を下から上に突き抜けるのは「デッドクロス」。これは株価が高い水準のときに起きると、売りのタイミングです。

 

変化という点でもう1つ見ておきたいのが、ローソク足の下に並んでいる縦棒グラフ。

 

これは、株の取引数を表す「出来高」というもの。株価が上がっているときは人気のバロメーター、下落しているときはパニックのバロメーターとして使います。

 

たとえば、株価が安い位置で推移しているときに、出来高が増えて株価も上昇し始めた場合、市場が「この株は買いだ!」と判断した可能性が高いといえます。こういう場合は、買い。「業績回復株」や「バリュー株」などは、出来高と株価の上昇が、値上がりスタートの合図になるケースがあります。

 

逆に、株価が高い位置にあるときに、出来高が増えて株価も下落し始めた場合は、市場が「この株はいち早く手放さなければいけない!」と判断した可能性があります。こういう場合は、売り。市場の状態が悪化したり、業績悪化につながる悪い材料などが出たりしたときには、このようなパニックが起きやすくなります。

 

次に、株価指標の部分。ここには、株価の割安さの指標となるPERとPBRが書かれています。

 

PERは「株価収益率」のことで、いまの株価が、1株当たりの当期純利益の何倍まで買われているかを示しています。1株当たりの当期純利益は、Jブロックに書かれていた「1株益」(EPS)です。

 

PBRは「株価純資産倍率」のことで、いまの株価が、1株当たり純資産の何倍まで買われているかを示しています。現在の株価が割安か割高かを判断するために使います。

 

PERとPBRは、株価の割安、割高の指標としてよく使われますが、一方で、PERとPBRは「投資家の期待の表れ」と見ることもできますから注意が必要です。

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※本連載は、渡部清二氏の著書『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋・再編集したものです。

会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業

会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業

渡部 清二

SBクリエイティブ

難しいことは一切ナシ! 25年間以上『会社四季報』の全号・全ページを完全読破してきた“会社四季報の達人”が、超優良企業を見つける≪超・簡単メソッド≫を伝授!

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