年間約100兆円近い米軍事予算…ロシアのおよそ10倍
そうなると米国の圧倒的優位性が浮かび上がってくる。米国は世界最大の石油ガス産出国かつ純輸出国である。エネルギー価格上昇は国全体ではマイナスではない。またトウモロコシ、小麦、大豆など世界最大の穀物輸出国でもある。
実際年初来SP500株価指数が7.8%下落しているなかでエネルギーセクターの株価は43.7%、農産物セクターは43.4%と突出して上昇している。
製造業の衰退が強調されるが、先端産業での競争力は圧倒的である。中国を除く世界のインターネット・サイバー空間を米国のFANGM5社が支配しており、その技術力イノベーションの力は他国を寄せ付けない。また基軸通貨ドルを通して世界の金融を支配している。
ロシアはそのくびきから逃れるために人民元と金保有を大きく高めたが、米、欧、日、英の中銀の連携によりその外貨準備の約半分は凍結されてしまった。
米国の7,782億ドルの軍事予算は、世界第2位の中国の3倍、ロシアの10倍と圧倒的(2020年)で、正面対決すればどの国も敵ではない。世界大戦への展開を回避するために正面からウクライナ支援をしていないが、それは米国が弱いからではない。
批判はあるものの米国は世界最強の民主主義国、人権尊重国であり、大半の避難民が望む最後の目的地は米国である。そこには他国にはない機会と夢がある。米国の政治リーダーのなかには驚くほど東欧からの難民やその子弟が多い。
「米国衰退」は幻…中国とロシアの“致命的な誤解”
この米国が衰退しつつある大国であるかのイメージでとらえられ、それを信じたプーチンがウクライナ侵略をしたり、習近平が覇権挑戦を試みたりしているが、それはシンプルに間違いである。
米国の地政学的プレゼンスの低下は、対テロ戦争が手詰まりになったことから始まった。オバマ氏が核廃絶を標榜し、世界の警察官をやめると宣言したことで、「力による外交」を放棄したと誤解された。
続くトランプ政権はアメリカファーストを唱えて自国中心主義に回帰し、昨年バイデン政権はなにも得ないままにアフガンから撤退したことで、世界に大きな力の空白が生まれたことに疑いはない。
習近平の南シナ海専横もプーチンのウクライナ侵略もそれにつけ入ったものであることは明らかである。それは米国外交の失敗であるが、米国の力の低下によるものではない。
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