Q2. 就寝時間が遅くて「黄金の90分」に眠れません。
⇒A. 何時に寝ても大丈夫です。
「黄金の90分」によってホルモンバランスや自律神経も整うため、心と脳がリフレッシュされます。逆にいえば、例えばうつ病の人は入眠直後の深いノンレム睡眠が出にくく、出ても短くなることがわかっており、そうなってくるといくら長く寝ても疲れが取れず、スッキリしないという悪循環に陥ります。入眠して最初に訪れる一番深い眠り、「黄金の90分」がいかに大切かは、だいたいお伝えできたと思います。
■「0時前に寝ないと黄金の90分を逃す」は誤解
時折、「仕事柄、日付が変わる前に就寝するのは無理なので、黄金の90分を逃しています」という話を耳にしますが、困った誤解です。
しっかりと訂正しておきます。午後10時に寝ようと、午前2時に寝ようと、眠って最初に出る深い眠りが「黄金の90分」です。午前0時前に寝ても入眠直後に深い睡眠が出現しないなら、黄金ではなく金メッキの90分です。
なぜ、こんな誤解が広まってしまったのでしょう? 「入眠直後が黄金の90分」となると、人は「何時に寝たらいいのか?」と目安を知りたがります。1日7時間寝るのが理想として、朝6時から7時に起きるなら、逆算して「午前0時前後にベッドに入ればいい」となります。そこから「日付が変わる前に寝ないと黄金の90分にならない」という説ができたのでしょうか。
美容系ではこれがさらに発展し、「午後10時から午前2時までがお肌のシンデレラタイム」といった情報もあります。その理由として「この時間帯に(成長)ホルモンが大量に分泌される」となっていますが、深いノンレム睡眠中でなければ、魔法のごときホルモンの恩恵にはあずかれず、シンデレラになるのは無理でしょう。要は何時に寝ても良いのですが、入眠直後のノンレム睡眠を深く長く90分程度持続させることが必要で、そのためには、いくつかのTIPSがあります。これからの連載で、そのTIPSを順を追って紹介できればと思います。
ライフスタイルも働き方も多様化し、育児中だったり、介護をしていたり、シフトワーカーだったりする人が、全員「日付が変わる前に寝る」というのは不可能です。
理想の睡眠時間を取れない人は大勢います。しかし「7時間の理想の眠り」は無理でも、「最初の深い眠りである黄金の90分の確保」なら、できる人は増えます。
最小限の努力で最大限の効果が期待できる――それが「黄金の90分」なのです。
西野 精治
医師、医学博士
スタンフォード大学医学部精神科教授
株式会社ブレインスリープ 創業者兼最高研究顧問
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