価格上昇が続く、アメリカの住宅市場。「住宅バブル」と形容され、再びその崩壊の危険性が問われています。しかし現在の米国不動産市場はそれほどまでに過熱した状態にあるのでしょうか。見ていきましょう。

新規借入れは減らず。借り換え減に惑わされるな

アフォーダブル・インデックスの話をすると、「計算式ではそうかもしれないが、ローンを借りて家を買う人は本当に減っていないのか? 金利上昇分の損になるんだから、買い控える人もいるはずだろう」とおっしゃる方がいます。

 

ご指摘の心理はよく分かりますし、実際にそういった行動を取る方もいらっしゃるのは事実です。しかし、アメリカ人の家の買い方を知っている我々からすると、彼らに主流の考え方はむしろこうです。

 

「金利はどう動くか分からないから、借りられる範囲なら気にせず借りよう。下がったら借り換えればいいだけだ。金利が下がるのを待ったって、その間にこのインフレでは住宅価格は毎年上がる一方だし、肝心の金利もさらに上がってしまうかもしれないし」

 

不確実なものを待つより、それぞれのライフプランを優先して柔軟に動こうとするのがアメリカ人なのです。それを裏付けるように、今年にはいり金利が上昇してからも住宅購入に伴う新規借り入れの実行残高はほとんど減っていません。

 

借り換えは激減していますが、これは当たり前のことです。誰だって金利の安い時期に借り換えたいので、低金利の期間に申し込みが殺到します。今借り換えている人は、金利が最安の時期から少し遅れて申し込みを済ませ、これから実行しようという人だけです。

 

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[図2]住宅ローン組成割合出所:Hud User Office Of Polycy Development and Researchを元にオープンハウスが作成

 

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[図3]全米3代エージェンシー経由の住宅ローン実行額出所:Hud User Office Of Polycy Development and Researchを元にオープンハウスが作成

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高リスクな住宅ローンは今やごくわずか

アメリカの住宅バブルの話題になると、必ず持ち上がるのがサブプライムローン問題。信用力の低い低所得層向けの貸付(サブプライムローン)が加熱、2006年には返済不能者が続出したことが発端となり、世界経済に多大なる影響を及ぼしました。SNS等では、このときの状況と現在の住宅購入ブームを重ね合わせる方も見かけますが、実態はまったく違うと言えます。

 

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[図4]エージェンシーMBSとノンエージェンシーMBSとの割合出所:Urban Institute: Housing Finance At A Glance A Monthly Chartbook(P12)より引用

 

上に掲載したのは、MBS(MortgageBackedSecurities)という金融商品のうち、エージェンシーMBSとノンエージェンシーMBSとの割合の推移を示すグラフです。MBSとは、住宅ローンを貸し付ける金融機関が発行する、ローンの元本や返済利子を裏付けとする証券です。この証券の特徴は説明しはじめると長くなるので割愛します。一旦は住宅ローンに紐づく金融商品とだけご理解ください。

 

このMBSには、政府系の金融機関による保証が付いたエージェンシーMBSと、保証がないノンエージェンシーMBSとがあります。エージェンシーMBSの裏付けとなる住宅ローンは、信用力の高いプライムローンのみ。一方、ノンエージェンシーMBSの裏付けには、信用力の劣るサブプライムローンが含まれます。

 

図4からも分かるように、現在のMBS発行比率は、95.25%がエージェンシーMBSです。つまり、サブプライムローンの比率は最大でも4.75%。低所得者が差し押さえや強制執行させられて、その結果住宅価格が下落してしまう、サブプライムローン・バブル発生時とはまったく違う状況にあるのです。

 

以上3つの理由から、アメリカの住宅市場はバブルにはないと私は考えます。この見立てがあっているかどうかは、時間の経過が教えてくれることでしょう。

 

浅井 聡

株式会社オープンハウス チーフストラテジスト

 

 

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