定期健診は生活習慣病の予防と早期発見
■動脈硬化を進める肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボ
職場の定期健診では、特にいくつかの生活習慣病について予防や早期発見を目指して診断基準が定められています。発症には労働環境などの環境因子、ストレス、遺伝などが関係することもあり、すべてが生活習慣だけに由来するわけではありませんが、食事や運動習慣、飲酒、喫煙、睡眠、働き方といった生活習慣を改善することで、予防・改善を期待できるのがこれらの病気の特徴です。
■肥満
標準より体重が多く、脂肪が蓄積している状態が肥満です。BMI(Body Mass Index:体格指数/肥満指数)で18.5~25未満が適正体重で、25以上が肥満と判定されます。日本では女性は30代頃まではやせ(BMI18・5未満)が多く、男性では20~30代から肥満が増えています。特に内臓周辺に脂肪がたまる内臓型肥満は、血圧や血糖値を上昇させ、メタボリックシンドロームや動脈硬化のリスクを高めます。
■高血圧
最高血圧(収縮期)140mmHg以上、最低血圧(拡張期)90mmHg以上となると、高血圧になります。高血圧があると血管に強い圧力がかかって血管を傷つけ、動脈硬化を進行させます。また血管が硬くなると、強い力で血液を送り出さなければならなくなり、心臓に負担が掛かり心肥大や不整脈などの原因になります。職場の健診では血圧が基準値内でも夜間や早朝に高血圧が起こっている場合もあり、注意が必要です。
■糖尿病
食事で摂取した糖が体内でうまく使われず、血液中に糖があふれて血糖値が高い状態が続くのが糖尿病(Ⅱ型糖尿病)です。空腹時血糖値が126mg/dl以上、食後血糖値200mg/dl以上、HbA1c6.5以上などで糖尿病と診断されます。糖尿病は中高年以降だけでなく、若い世代でも増加傾向にあります。高血糖の状態が続くと血管が傷つき、動脈硬化を進めます。糖尿病が進行すると目の網膜や腎臓の細かい血管や神経にダメージが及び、糖尿病性の網膜症、腎症、神経障害といった合併症を起こします。
■脂質異常症
脂質代謝のバランスが崩れているのが脂質異常症です。以前は「高脂血症」と呼ばれていました。中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上、LDLコレステロールが140mg/dl以上、HDLコレステロールが40mg/dl未満などの場合に、脂質異常症と判断されます。脂質異常症があると血管壁の傷に余分な血中脂質が入り込み、血管内腔が狭くなって血管が詰まりやすくなります。近年は、若い世代にも脂質異常症がたいへん多くなっています。
■メタボリックシンドローム
内臓脂肪が蓄積した状態がメタボリックシンドロームです。内臓脂肪面積100㎠以上に相当する基準として、男性は腹囲85㎝以上、女性は腹囲90㎝以上が一つの指標になっています。腹囲に加えて高血圧、高血糖(空腹時高血糖110mg/dl以上)、脂質異常のなかで2つ以上に当てはまると、メタボリックシンドロームと判定されます。メタボになると動脈硬化が加速度的に進みやすく、脳・心臓疾患のリスクが急上昇します。メタボはまだ病気ではないと思わず、すぐに生活改善の取り組みを始めることが大切です。
富田 崇由
セイルズ産業医事務所