最先端機器を駆使する在宅医療のその先
もちろん、すべてがアナログというわけではありません。少し進んでいるところでは、患者エントリーフォームがホームページ上にあり、紹介元がそのエントリーフォームに患者情報を入力して送信すると自動的にクリニックの患者データベースに加えられ対応が決められる……さらには、ある一部の地域では、紹介された患者の紹介元病院のカルテを、ネットを通じて閲覧することができます。そうすると、実際に患者のところに行く前に、おおよその状況を理解することができるのです。
そして、いざ診療開始ということで、患者宅に向かいます。もちろんナビシステムを使い向かいますが、出発前には、その家の外観をグーグルのシステムを使って把握しておきます。そしてナビゲーションも、車に付属しているナビゲーションシステムを使うのではなく、スマホ上で電子カルテを開いて、その患者の住所のところをクリックして地図アプリに飛び、それを使ってナビゲーションしてもらいます。最近はスマホの画面が、車載のディスプレイ上に映し出されて、使いやすくなりました。スマホの地図アプリは、更新頻度が高いので非常に便利です。
患者宅に着くと、スマホやタブレットを用いて、患者のカルテを開き、診療が始まります。現在では、多くのクリニックで、いわゆるクラウド型の電子カルテを使用しているのではないでしょうか。
そうすると、たとえ何らかの都合で、訪問に伺う医師チームが急遽変更になっても、カルテがなくて困るということはありません。どこでも、誰でもが必要なときにカルテを開いて診療を始められるのです。看護師さんが患者さんの血圧などバイタル情報を取得し、その結果を看護記録に入力すると、その結果は瞬時に医師の記録部分に反映されます。
また薬の処方箋も、前回のものが自動でその日の診療録に取り込まれているので、それを少し修正するだけで処方箋発行ができます。小さなプリンターを持参して、その場で印刷しておいてくるだけでなく、薬局に電子情報として同時に送ります。その情報をもとに薬局は薬を揃え、患者宅にお届けします。
患者の診察のときには、ときとしてエコー検査やレントゲン検査も行います。ポータブルエコーの中にはとても小型のものがあり重宝しています。
またポータブルレントゲン装置としては撮影したその場でノートパソコンの画面上で画像を確認できるものが開発され、とても便利になりました。経鼻胃管を挿入したときなど、チューブの先端の位置確認がその場でできるので、診療の効率がとても上がりました。ポータブルの心電計(心電図をとる機械)ももちろん導入されてきています。
そして、このように診察した結果は、カルテに記載されるだけでなく、連携している訪問看護ステーション、ケアマネージャー、施設職員などと、チャットアプリを使って共有されます。逆に、施設職員や訪問看護ステーションから患者の異変について報告が来るのも、チャットアプリを用いているところが多いでしょう。電話だと情報の正確さに問題が生じると同時に、クリニック内での正確な情報の共有もとても難しくなってしまうからです。
このように、診療側では、まさに多くのデジタル機器が用いられ、それを活用するデジタル環境も整ってきていて、まさにDXが進んできています。
さらに今後は、患者側のDXが進んでいくでしょう。マイナンバーカードなどを用いての個人情報と診療情報の紐付け、スマートウォッチを用いた各種生体情報の取得。たとえば、現状でも、脈拍を感知して不整脈を検出したり、酸素飽和度を常にモニターしたりできますが、近い将来、血糖値すらわかるようになるかもしれません。またスマートウォッチを腕につけていて転倒した場合は、そのことが、登録した家族などに瞬時に連絡され、家族が駆けつける……そんな未来も、そう遠いことではないでしょう。
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