(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の会社の実に99.7%が中小企業であり、世界に誇る技術を保有しているところも多数存在します。しかしいま、多くの経営者は後継者不足に悩んでいます。次世代へビジネスを承継できなければ廃業、もしくは海外資本に買われるしかなく、そうなれば、独自技術等の貴重な財産が日本から消失してしまいます。日本の将来のためにも、多くの人が事業承継の重要性を理解することが大切です。

社長から後継者へ…株式はどのように渡せばいい?

社長の株式を後継者に渡す方法は、大きく分けて3つあります。社長の株式を、①贈与(無償譲渡)する、②売る(有償譲渡)、③相続する、の3つの方法です。また、株式をそのまま後継者に贈与、売る、相続するのではなく、信託を利用して渡していく方法もあります。信託による承継は、まだ事例が少ないのですが、株式を渡す際に懸念されることにも対応でき、今後その利用は増えていくと思われます。

 

社長は株式をいつ後継者に渡すか。時期を決める判断は重要で、事業承継を大きく左右します。渡し方とその渡す時期について計画を作り、その計画を実行していきます。

株式の渡し方が決まれば、必要なコストがわかる

後継者への事業承継には必ずコストがかかります。コストを削減することや猶予することは可能ですが、無くすことはできないと考えたほうがよいでしょう。

 

株式の渡し方と時期を決め、必要なコストを計算し、そのコストに対する資金を準備する計画を作っていきます。

 

コストの中心は、税金の負担です。贈与税、所得税、相続税のうちどの税をいくら支払うか、これを明確にしていくことが必要です。税負担は事業承継におけるコストと位置付けます。コストを負担することの覚悟が決まれば、税負担の軽減を検討するにとどめて過度な節税を意識する必要はないと、筆者は考えています。

 

筆者の経験から、過度な節税を試み、専門家費用や資産の組み換え等で余分な費用負担をしている社長がいると感じることがあります。

事業承継におけるコストの準備は「生命保険」で

事業承継におけるコストへの準備は、生命保険の活用が欠かせません。

 

筆者の経験から、「生命保険で万全に準備しているから大丈夫」という社長にこれまで何人も会いましたが、完璧に準備をされていた方はいらっしゃいませんでした。生命保険の活用のしかた如何で効果に大きな差が出てきますので、事業承継における生命保険の見直しや新規の契約は重要なポイントです。

計画作成と実行にはサポーターが必要

事業承継の計画作りとその実行は、法律と税務に関する検討が欠かせません。そのため、弁護士や税理士の関与が必須となります。

 

事業承継は、経験豊富な税理士に任せるという方が多いと思います。筆者もその選択は正しいと思います。しかし、社長と後継者の事業承継計画への支援は誰が適任か、計画を作る前にじっくりと考えて、支援者を選択していただきたいと思います。

 

また、事業承継のコストへの対応を考えて、生命保険のプロフェッショナルの支援も必要と筆者は思っています。

「想定外の事態」も想定の上、計画の遂行を

計画通りに進まないことも多々あります。想定していなかった事態が生じることもあります。定期的に、計画を見直す、当初の想定を確認することなどをしながら、事業承継計画を実行していきます。

 

また、社長が高齢になると、健康上の問題などが生じてきます。問題が生じてからでは選択できる手段も限定されます。選べる手段が限定されたなかで事業承継計画を進めていくより、多くの手段のなかから社長と後継者の状況に応じた選択ができるよう、事業承継計画は早めに着手していただくことをお勧めします。

 

社長の株式を、社長の相続時に後継者に渡すという方法を選択したとしても、その計画と計画を実行するための準備は、社長が75歳までに終了するといった具体的な期限を決めて進めるとよいのではと、筆者は考えています。75歳の平均余命は、男性で12年、女性で16年です。

 

健康上の問題などが生じる前元気なうちに事業承継に関する課題は片付けて、社長の残りの人生を謳歌していただきたいと、筆者は思っています。

 

 

石脇 俊司
一般社団法人民事信託活用支援機構 理事
株式会社継志舎 代表取締役

 

 

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