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「NAFLD/NASH」の疾病率は、日米で同程度
■脂肪肝がはじめて注目されたのは、肥満患者の多い米国だったが…
メタボとつながりが強いと思われがちな脂肪肝ですが、肥満ではない正常体重の人でも脂肪肝になることがあります。
NAFLDの患者は、アメリカでは肥満の人において疾病率が高くなっています。ですが日本人は肥満の割合がアメリカほど多くないはずなのに、NAFLD/NASHの疾病率はアメリカと同程度です。その理由として次のように考えられます。
肥満とは単に体重が多いだけではなく体脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。体脂肪は本来ならばエネルギー源であるブドウ糖が体内で不足した場合に、それを補うものとして使われます。
体脂肪は脂肪が付く場所により皮下脂肪と内臓脂肪に分けられます。体脂肪は、食事の脂肪や糖から作られます。その中でエネルギーとして消費されずに体内で蓄積されたものが体脂肪となります。体脂肪が皮膚のすぐ下の皮下組織に付くと皮下脂肪となります。内臓の周りに溜まると内臓脂肪となります。そして皮下脂肪、内臓脂肪という脂肪組織に入りきらなかった場合に異所性脂肪となるのです。異所性脂肪というのは、文字どおり本来溜まるはずのない場所(肝臓や心臓といった臓器や筋肉など)に蓄積される脂肪のことです。異所性脂肪が肝臓で増えていくと脂肪肝になります。
■アジア人は中性脂肪の貯蔵先が少ない分、異所性脂肪が溜まりやすい
アジア人は小柄な人が多く中性脂肪の貯蔵先である皮下脂肪や内臓脂肪のストックがもともと少ないとされるので過食すると異所性脂肪が溜まりやすく、脂肪肝になりやすいと考えられています。
特にBMI(英語表記Body Mass Index/体重kg÷身長mの2乗)が25未満の人のNAFLDは、欧米よりもアジアで疾病率が高いとされています。その原因としてPNPLA3という遺伝子の変異がアジア人に多く見られ、それがNAFLD/NASHの発症や進行に関わっている可能性があるようです。
無理なダイエット、極端な食事制限によっても発症!?
意外なことかもしれませんが、ダイエットによる栄養障害でも脂肪肝になることがあります。
肝臓は血糖を一定に保つ機能があります。極端な食事制限をした場合、体内では血糖値が低下してインスリン分泌の低下が起こります。体はエネルギー不足となっているので、皮下脂肪などから脂肪を分解し遊離脂肪酸を血中に分泌します。そのうち使われなかった遊離脂肪酸は肝臓に集まり、肝臓はそれを中性脂肪に変えようとします。
このとき肝臓に集まった中性脂肪を血液中に流すには、たんぱく質の助けが必要です。ところが極端な食事制限やある特定の食材しか食べないダイエットをしていると、たんぱく質が不足しているので、血液中に脂肪を流すことができません。その結果、肝臓に中性脂肪が溜まり続けてしまい脂肪肝になりやすいというわけです。
私が知るなかにも、やせている女性に脂肪肝が見つかった例があります。年齢は60歳、食事は質素で、お酒も飲まず、趣味で登山を楽しんでいる女性でした。なぜか健康診断の肝臓の数値が悪く、超音波検査をしたところ、すでに肝硬変へと進行していました。
女性の体の特徴として、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが、脂質の代謝に深く関わっていることが分かっています。閉経後は、エストロゲンの体内の量が急に減るために中性脂肪の値が急上昇することがあります。
そして脂っこいものを控えようとたんぱく源である肉や魚を控え過ぎ、肝臓内の中性脂肪を排出するためのたんぱく質が十分に生成できなかったことで中性脂肪がうまく肝臓の外に運び出されなかったなど、なんらかの食生活が影響したとも考えられます。
脂肪肝になりたくなければ、必ず肉や魚類の動物性たんぱく質と大豆食品などの植物性たんぱく質の両方を組み合わせて摂るようにし、栄養バランスを崩さない食生活をすることが重要となります。また食べた分だけきちんと消費できるように、日常生活での活動量を増やす意識も必要です。
川本 徹
みなと芝クリニック 院長
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