「半血兄弟」に、きょうだいとしての相続権はあるか?
さて、この半血兄弟ですが、きょうだいとして相続権はあるのでしょうか。
半血兄弟は、片親しか共通ではありませんが、法律上はきょうだいであり、きょうだいに子どもや親といった相続人がいなければ、第三順位の相続人であるきょうだいとして相続権を持ちます。
したがって、片親だけを共通をする場合は、きょうだいとはいえず、相続権はないとする選択肢①は誤りとなります。
では、全血兄弟と半血兄弟は、相続分はどうなるでしょうか。
法律上、半血兄弟の相続分は全血兄弟の2分の1とされています。
したがって、全血兄弟と半血兄弟の相続分は平等とする、選択肢②は誤りです。
正解は、半血兄弟もきょうだいとして相続権があるとして、その相続分は、全血兄弟の2分の1とする選択肢③となります。
本件のポイントは「きょうだいに遺留分なし」という点
相続分が、半血兄弟は全血兄弟の2分の1となるということはどういうことか説明します。
本件では、健二さんと太一さんは両親を同じくする全血兄弟、健二さんと恵子さんは父親だけ共通とする半血兄弟となります。
健二さんが亡くなった場合、健二さんは独身で、奥さんも子どももいませんし、両親も亡くなっていますから、健二さんの相続人は、全血兄弟である太一さんと半血兄弟である恵子さんとなります。
そして、相続分は、半血兄弟の相続分が全血兄弟の相続分の2分の1となるということですから、全血兄弟の太一さんの相続分が2、半血兄弟の恵子さんの相続分が1ということとなります。
すなわち、太一さんの相続分と恵子さんの相続分が2:1となり、太一さんの相続分は3分の2、恵子さんの相続分は3分の1となります。
相続人が、全血兄弟2人、半血兄弟1人の場合、全血兄弟AとBがそれぞれ2、半血兄弟Cが1で、2:2:1という割合になるため、相続分はAとBが5分の2、そしてCが5分の1となります。
逆に、全血兄弟が1人、半血兄弟が2人の場合は、全血兄弟Aが2、半血兄弟Bが1、半血兄弟Cが1で、2:1:1となり、Aが2分の1(4分の2)、BとCはそれぞれ4分の1となります。
本件では、このままなにもせずに健二さんが亡くなってしまうと、健二さんの貸しビルや貸しマンションなどの遺産の3分の1は、前妻の子どもである恵子さんに相続されることとなってしまいます。
ただ、きょうだいには遺留分がないことから、健二さんが太一さんに遺産を全部相続させるという遺言を書けば、全財産は太一さんが相続し、半血兄弟である恵子さんは遺留分を請求することができず、遺産は恵子さんにはいかなくなります。
本件では、太一さんと健二さんが、父親である一郎さんが再婚で、前妻とのあいだに子どもがいる、ということを知っているので対策を立てることができます。しかし、実際は、父親や母親が再婚だったということを知らずに、亡くなって戸籍謄本を取得してみたら、父親は再婚で半血兄弟がいたということがわかる、などということもたまにあります。
相続のことが心配になってきたら、相続が発生したときは、誰が相続人となるか確認するために一度戸籍を取ってみることも必要だと思います。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士
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