■イデコだけで老後資金「2000万円以上」確保は十分可能だが…
掛け金が所得控除されるということは、投資した時点で、限界税率の分だけリターンが取れることを意味する。限界税率というのは、現在の所得から、1円所得を増やしたときに、何%の税金が取られるのかという数字だ。所得税や住民税の計算は煩雑なので、子ども2人の標準世帯(妻が専業主婦)の場合、年収ごとにどれだけの限界税率があるのかを示しておこう。
年収616万円以下:15%
616万円<年収<801万円:20%
801万円<年収<1214万円:30%
1214万円<年収<1431万円:33%
1431万円<年収:43%
例えば年収900万円の人が年間100万円の掛け金を支払ったとすると、その時点で、30万円が減税として戻ってくることになるのだ。こんなおいしい話はないだろう。
もちろん、掛け金には限度がある。限度を設けなかったら、金持ちが掛け金を大きく膨らませて、税を逃れてしまうからだ。
限度額は、以下のとおりとなっている。
自営業者:月額6.8万円
公務員等:月額1.2万円
確定給付型企業年金、確定拠出型企業年金のいずれもない会社員:月額2.3万円
確定拠出型企業年金のみがある会社員:月額2万円
確定給付型企業年金がある会社員:月額1.2万円
イデコの掛け金は最低月額5000円からで、上記の上限の範囲内で1000円単位で自由に決めることができる。途中で金額の見直しはできるが、途中解約や資金の引き出しはできない。加入できる年齢は20歳から60歳までだが、2022年5月以降は、65歳まで加入できるようになる。
仮にイデコで20歳から65歳まで45年間、企業年金のない企業に勤務する人の限度額である2.3万円を毎月貯め続けたとすると、65歳の時点で1242万円が貯まることになる。
これに減税で戻ってくる分が、限界税率を20%と仮定すると、248万円となるから、合計で1490万円を手にすることができる計算だ。実際には、ここに運用益が加わるから、イデコだけで2000万円以上の老後資金を確保することは十分可能だ。