老後資金「iDeCoで確保」は得策か?加入年齢「65歳まで」延長だが【経済アナリストが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

いま現役で働いている人々は、将来どれだけの年金を受給できるのでしょうか? 現時点で最もあり得るのは、受給額が今後ずるずると減っていき、30年後には夫婦2人で月13万円しかもらえなくなるというシナリオです。このまま行くと、平均的な日本人が高齢期を迎えると、「長生き地獄」にまっしぐらとなってしまいます。安泰の老後を迎えるには、どうすればよいのか。年金月額13万円時代への対処法として、今回は「iDeCo」について見ていきましょう。

【関連記事】夫婦で「月13万円」に減額…公的年金の「恐ろしい未来」 (経済アナリストが解説)

「定年まで」はiDeCoがオススメ

投資の収益は不安定だが、日本には、定年までは、安定して高利回りが得られる商品が一つだけある。それがiDeCo(イデコ)だ。

 

イデコは、正式には「個人型確定拠出年金」と呼ばれる老後資金を形成するのを支援するための個人年金制度だ。この制度は、自分で申し込み、自分で掛け金を拠出し、自分で運用対象を選ぶことができる。運用先は、預金でも、投資信託でも構わない。積み立てたお金は、60歳以降に一時金あるいは年金の形で受け取ることができる。イデコの有利な点は、掛け金が税制上、所得控除の対象となり、運用益が非課税で、そして給付を受け取る際にも、税の優遇措置があることだ。イデコの掛け金は、所得控除される一方で、受け取るときには所得に加算される。その際、年金方式で受け取れば公的年金等控除が適用され、一時金で受け取れば退職金税制が適用される。

 

自営業者などで公的年金等控除の最低保証額(65歳以上の場合110万円)まで余裕がある場合は、年金方式で受け取ってもよいが、一般的には一時金で受け取ったほうが有利になる。退職金には、①分離課税、②2分の1軽課、③退職所得控除という3つの税制優遇があるからだ。ちなみに退職所得の計算は、以下に示すとおりになる。

 

退職所得にかかわる税金=(収入金額–退職所得控除額)×2分の1×税率

 

 退職所得控除額

 ●加入期間20年以下:40万円×加入期間年数(1年未満切り上げ。以下同様)

 ●加入期間20年超:(加入期間年数–20年)×70万円+800万円

 

例えば、イデコに30年加入していた場合、1500万円までの受け取りは退職所得控除で控除されるので、税金は1円もかからない。ただ、会社から退職金を受け取っている場合は、退職金とイデコの受け取りが合算されて退職所得控除額が計算されるので、大きな金額の退職金を受け取っている人は、税金を払わなくてはならない。もちろん分離課税と2分の1軽課という退職金の優遇税制は受けられるので、税額は現役世代が所得税で支払う額と比べたら、はるかに小さくなる。

 

ただ、どうしても税額を抑えたい人には裏技が存在する。それは退職金の「5年ルール」と呼ばれるものだ。前に退職金を受け取った時から5年以上経過していれば、退職所得控除がそれぞれ全ての期間で認められるというルールだ。なぜそんなルールがあるのか、これは私の想像だが、高級官僚のために用意されているものだと思う。高級官僚は、定年前に役所を辞める。そして天下りをする。天下り先では、5〜6年勤めて、再び大きな額の退職金を手にする。その「2回目の退職金」にかかる税金を少しでも小さくするために5年ルールは、作られているのだ。このルールを逆手に取って、会社からの退職金をもらう時点より5年以上前にイデコの一時金を受け取ってしまえば、退職所得控除がフルに使えるうえに、退職金のほうも退職所得控除が勤続年数分フルに使えるのだ。

 

ただし、会社からの退職金受け取り後にイデコの一時金を受け取る場合は、ルールが異なり、過去14年以内に受け取った退職金で使用した退職所得控除が使えなくなってしまうのだ。だから、例えばイデコを60歳で受け取って、退職金の受け取りは65歳からといった対応が必要になるのだが、大企業の場合は、退職金の給付を先送りしてくださいと頼んでも聞いてくれないことが多いだろう。その場合は、よく計算をして、イデコの受け取りを一時金と年金に分けるといった対策が必要になるだろう。

 

いずれにせよ、イデコは「減税」という形で、いきなり確定利回りを先取りできる制度だから、資産運用としてはとても有利なことは間違いない。

経済アナリスト
獨協大学経済学部 教授 

1957年7月12日生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。

主な著書に『なぜ日本だけが成長できないのか』『消費税は下げられる!』『雇用破壊』『親子ゼニ問答(森永康平氏との共著)』『長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』(いずれも角川新書)など。『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)では、“年収300万円時代”の到来をいち早く予測した。執筆のほか、テレビやラジオ、雑誌、講演などでも活躍中。

2022年3月28日には新刊『長生き地獄にならないための 老後のお金大全』(KADOKAWA)を発売。

著者紹介

連載「長生き地獄」の現実と対策 ~資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋

※本連載は森永卓郎氏の著書『長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』(KADOKAWA)から一部を抜粋し、再編集したものです。

長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋

長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋

森永 卓郎

KADOKAWA

夫婦2人の公的年金「月額13万円」時代がやってくる――長生き地獄を避けるには? 高齢者の生活を支えてきた公的年金が、今後ずるずると減り続けていく。今から30年後には平均的サラリーマン世帯だった夫婦2人の年金が、月額…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧
TOPへ