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「定年まで」はiDeCoがオススメ
投資の収益は不安定だが、日本には、定年までは、安定して高利回りが得られる商品が一つだけある。それがiDeCo(イデコ)だ。
イデコは、正式には「個人型確定拠出年金」と呼ばれる老後資金を形成するのを支援するための個人年金制度だ。この制度は、自分で申し込み、自分で掛け金を拠出し、自分で運用対象を選ぶことができる。運用先は、預金でも、投資信託でも構わない。積み立てたお金は、60歳以降に一時金あるいは年金の形で受け取ることができる。イデコの有利な点は、掛け金が税制上、所得控除の対象となり、運用益が非課税で、そして給付を受け取る際にも、税の優遇措置があることだ。イデコの掛け金は、所得控除される一方で、受け取るときには所得に加算される。その際、年金方式で受け取れば公的年金等控除が適用され、一時金で受け取れば退職金税制が適用される。
自営業者などで公的年金等控除の最低保証額(65歳以上の場合110万円)まで余裕がある場合は、年金方式で受け取ってもよいが、一般的には一時金で受け取ったほうが有利になる。退職金には、①分離課税、②2分の1軽課、③退職所得控除という3つの税制優遇があるからだ。ちなみに退職所得の計算は、以下に示すとおりになる。
退職所得にかかわる税金=(収入金額–退職所得控除額)×2分の1×税率
退職所得控除額
●加入期間20年以下:40万円×加入期間年数(1年未満切り上げ。以下同様)
●加入期間20年超:(加入期間年数–20年)×70万円+800万円
例えば、イデコに30年加入していた場合、1500万円までの受け取りは退職所得控除で控除されるので、税金は1円もかからない。ただ、会社から退職金を受け取っている場合は、退職金とイデコの受け取りが合算されて退職所得控除額が計算されるので、大きな金額の退職金を受け取っている人は、税金を払わなくてはならない。もちろん分離課税と2分の1軽課という退職金の優遇税制は受けられるので、税額は現役世代が所得税で支払う額と比べたら、はるかに小さくなる。
ただ、どうしても税額を抑えたい人には裏技が存在する。それは退職金の「5年ルール」と呼ばれるものだ。前に退職金を受け取った時から5年以上経過していれば、退職所得控除がそれぞれ全ての期間で認められるというルールだ。なぜそんなルールがあるのか、これは私の想像だが、高級官僚のために用意されているものだと思う。高級官僚は、定年前に役所を辞める。そして天下りをする。天下り先では、5〜6年勤めて、再び大きな額の退職金を手にする。その「2回目の退職金」にかかる税金を少しでも小さくするために5年ルールは、作られているのだ。このルールを逆手に取って、会社からの退職金をもらう時点より5年以上前にイデコの一時金を受け取ってしまえば、退職所得控除がフルに使えるうえに、退職金のほうも退職所得控除が勤続年数分フルに使えるのだ。
ただし、会社からの退職金受け取り後にイデコの一時金を受け取る場合は、ルールが異なり、過去14年以内に受け取った退職金で使用した退職所得控除が使えなくなってしまうのだ。だから、例えばイデコを60歳で受け取って、退職金の受け取りは65歳からといった対応が必要になるのだが、大企業の場合は、退職金の給付を先送りしてくださいと頼んでも聞いてくれないことが多いだろう。その場合は、よく計算をして、イデコの受け取りを一時金と年金に分けるといった対策が必要になるだろう。
いずれにせよ、イデコは「減税」という形で、いきなり確定利回りを先取りできる制度だから、資産運用としてはとても有利なことは間違いない。