香港には銀行をはじめ各種の金融機関がありますが、投資資産の管理・運用を行う場合には、どのような金融機関を利用することになるのでしょうか。今回は、3種類の銀行について見ていきます。

香港における銀行の免許は3種類

世界三大金融都市として成長を続ける香港には、様々な金融機関がビジネスを展開しています。香港で投資資産の管理・運用を行う場合には、①銀行、②証券会社および投資顧問(IFA)、といった金融機関を利用することが一般的です。今回は、これら異なるタイプの金融機関のうち、①銀行についてご紹介します。

 

香港で一般顧客から資金を預かる預金業務を行うためには香港金融管理局(HKMA)から以下の3種類の免許のいずれかを取得することが義務付けられています。

 

1.Deposit-taking Companies(貯蓄金融機関)
貯蓄金融機関は預入金額が10万香港ドル相当額以上で、かつ預入期間が3ヶ月以上の定期性預金を取り扱うことができます。現在香港では20ほどの貯蓄金融機関が営業しています。預金の最短預入期間が3ヶ月と長いため、市場の動きに合わせて機動的に資金を動かす必要のある資産運用の目的で利用されることは稀のようです。


2.Restricted Licence Banks(限定免許銀行)
限定免許銀行は先述の貯蓄金融機関と異なり、預入期間についての制限はありませんので預金者は預金の満期を自由に設定することができます。また、限定免許銀行における最低預入金額は50万香港ドル相当額と法令で定められています。ただし複数の通貨で預金する場合には、1通貨毎に50万香港ドル以上の預入金額が必要なのではなく、全ての通貨を合わせた合計の預入金額が50万香港ドル以上であれば問題ありません。


限定免許銀行は貯蓄金融機関と同様、当座預金や普通預金の取り扱いができないので、例えば小切手の入金といった取引には制限があります。しかしながら電信送金による入出金取引については特段制限はなく、後述の普通銀行と同様に利用できます。

 

現在香港では20強の限定免許銀行が業務を行っています。最近ではゴールドマンサックス、JPモルガン、モルガンスタンレー、シティバンクといった世界有数の金融機関が限定免許銀行のライセンスを取得した子会社を通じて、プライベートバンキングやウェルスマネジメント等の業務を行っています。

 

3.Licensed Banks(普通銀行)
日本の普通銀行と同様に、香港の普通銀行は金額や期間の制限なしに預金の預入を行うことができます。普通銀行に預けられた預金は香港の預金保険の対象となります。普通銀行によっては子会社に上記の限定免許銀行や貯蓄金融機関の免許を別途取得させて一部の業務を行っている場合があります。

証券当局への登録により証券業務も可能

上記3種類の金融機関はいずれも、証券先物取引委員会(SFC)に登録金融機関として登録することにより、証券業務を行うことが可能です。登録金融機関が行うことのできる証券業務の業務範囲は、銀行免許の種類(普通銀行、限定免許銀行、貯蓄金融機関)によって決まるのではなく、登録金融機関としての認可の内容によって決まります(詳しくは次回の証券会社の説明を参照ください)。

 

こうした仕組みのおかげで、普通銀行のみならず限定免許銀行や貯蓄金融機関は、銀行業務に加えて、投資資産の管理・運用を含めた証券業務を一つの屋根の下で行うことが可能で、幅広い金融サービスを提供することができます。


なお、以下のHKMAのサイトに上記3種類の金融機関のリストが掲載されています。
http://www.hkma.gov.hk/media/eng/doc/key-functions/banking-stability/banking-policy-and-supervision/addr.xls

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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