前回は、リーマン・ショックを契機に香港の投資家保護制度が大きく強化されたことをご紹介しました。今回は、投資家保護制度の具体的な内容を見ていきます。

「録音記録」に関する規定も多数

リーマン・ショックをきっかけに香港の金融界で発生した「ミニボンド問題」。その再発防止などに向け、香港金融管理局(HKMA)と金融界の有識者による議論の結果、最終的に以下のような投資家保護の強化策が実行されることになり、現在も適用されています。


1. デリバティブを内包する仕組商品を販売する際には、その商品が仕組商品であるという事実と、顧客の資産状況、投資経験及び投資目的に適合しなければ購入すべきでないことを明記した「注意書き」を商品説明資料に含めること。電話取引の場合は同様の注意を口頭で行い録音記録を残すこと。


2. 顧客の投資適合性審査は非営業部門のスタッフが行うこと。審査の結果のリスクプロファイルの写しは顧客に配布し、内容が顧客の投資適合性を的確に反映しているかを顧客自身に確認してもらうこと。審査時のやりとりは録音記録に残すこと。


3. 投資商品の販売の主要プロセスは録音記録に残すこと。録音記録は7年間保存すること。

 

4. 販売する投資商品のリスクは継続的に見直しを行うこと。その結果リスクレーティングが高まった場合には、購入した顧客にその旨通知すること。

HKMAとSFCによる「覆面調査」もあり

5. 販売する投資商品と顧客のリスクプロファイルとの間でミスマッチが生じた場合には、①ミスマッチが生じている事実と当該商品が適合性に欠くおそれがあることを顧客に通知、②当該商品を推奨する理由、または顧客が当該商品を選ぶ理由を記録、③ミスマッチの事実を確認する書面に顧客の署名をもらう、④以上のやりとりの録音記録を残すこと。当該営業担当者は上席から承認をもらうこと。


6. HKMAと証券先物取引委員会(SFC)はミステリー・ショッパー(覆面調査)制度を導入すること。加えて各登録金融機関もミステリー・ショッパー制度を導入すること。

 

7. 投資商品の販売に従事する営業担当者の報酬制度が手数料収入等の定量的な業績評価に偏らずに、コンプライアンスや内部管理上の基準に照らした評価もバランスをもって取り入れること。


8. 預金業務などの伝統的な銀行業務と投資商品の販売業務の間の誤認を防止するための措置を講ずること。例えば「投資相談コーナー」等の表示板の利用等。(ただし顧客が登録金融機関に預金口座情報を利用して投資商品の案内等を行うことを許可した場合は、投資相談コーナーにおいて銀行業務を行うことができる。)

 

次回は、香港における「クーリングオフ」の制度について見ていきます。

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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