「労働時間に当たるか、当たらないか」の判断基準
今回のクリニックの従業員がお昼休憩中に電話番をする事例のように、労働時間に当たるのか当たらないのかがわからないケースがあります。
労働基準法による労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により従業員が業務に従事する時間のことをいいます。
即ち、労働時間かどうかについては、従業員の行為が業務に関連しているかどうかや、院長の指揮命令下に置かれている時間かどうかが一つの要因になるのです。
クリニックの従業員がお昼休憩中に電話番をするケースは、院長からの指揮命令下に置かれていると客観的に判断される時間のため、休憩時間でなく労働時間とされる可能性が高いです。
同じように、お昼休憩中に来客対応のために、当番として会社に待機しているケースも、休憩時間でなく労働時間と判断される可能性が高くなります。
このように、お昼休憩中に電話対応や来客対応で待機している時間であっても、その時間は拘束時間になりますので、当然ながら労働時間として賃金が発生します。
他にも、以下のようなケースは、指揮命令下に置かれている時間と評価されるため、労働時間と判断される可能性が高いです。
●仮眠時間などの実際に従業員が労務に従事していない場合。
●自発的なものではなく会社の命令によるなどの早朝出勤や朝型勤務。
●始業時間前に朝礼を行う場合。
●必要に応じてすぐに実作業に従事しなければならない手待ち時間。
●勤務先の営業所から営業先への移動時間。
●始業前に制服に着替えたり、終業後に私服に着替えたりする時間。
一方、以下のようなケースは、指揮命令下に置かれている時間と評価されないため、労働時間と判断されない可能性が高いです。
●上司が始業時間より早く出勤しているため、暗黙の了解で従業員も始業時間より早く出勤する場合。
●通勤混雑を避けるために、自ら始業時間より早く出勤する場合。
●始業前の従業員のコミュニケーションの場として設けられている自由参加の朝礼。
●自転車で通っているため、仕事場へ到着後にスーツに着替えるなどの従業員の都合での着替え時間。
●持ち帰り残業を自宅などで行っている時間。
●出張先へ行く時間や、出張先から戻るための移動時間。