(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者の都合や、台風などのやむを得ない事情などにより、従業員がシフトより早く終業しなければならなくなった場合、賃金はいくら支払われるべきなのでしょうか? 医療機関を専門とする社労士が、医院を例にして解説します。医療系のみならず、他業種の場合にも参考になる内容です。

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シフトより早く終業した場合、賃金はいくら?

院長の都合だったり、台風などのやむを得ない事情のため、診察を予定より早く終了して医院を閉めることがあるかもしれません。

 

このような場合、勤務中の従業員も予定より早く業務を終業して帰宅する必要があるでしょう。

 

このケースのように、従業員がシフトより早く終業しなければならなくなった場合、シフト通りの賃金を支払う必要があるのでしょうか?

 

診察を予定より早く終了して医院を閉めなければならない場合、シフト通りの賃金を従業員に支払う必要はあるかどうかについて考えてみます。

 

■「使用者の責に帰すべき事由」に該当すれば、「休業手当」が生じる可能性

通常医院で院長と従業員の間で結ばれている労働契約は、特定された日の特定された時間に従業員が労働を提供する対価として、賃金が支払われる契約になっています。

 

しかし、従業員が労働を提供しなければならない日・時間に、労働を提供できなければ、院長にはその日、時間の賃金の支払義務は発生しないのです。

 

この原則のことを、ノーワーク・ノーペイの原則と言います。

 

但し、労働基準法の第26条には、休業手当が以下のように定義されています。

 

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」

 

即ち、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は、ノーワーク・ノーペイの原則が当てはまらないのです。

 

この労働基準法で定義されている休業手当は、1日休業した場合だけでなく、診察を予定より早く終了して医院を閉めた場合のような時短でも適用されます。

 

そのため、従業員に労働基準法で定める休業手当を支払うかどうかのポイントの一つは、使用者の責に帰すべき事由であるかどうかになります。

 

診察を早く終了して医院を閉めたことが、医院または院長の都合であれば、労働基準法で定義されている休業手当を支払う要因のうちの一つになります。

 

一方、地震や台風などの天変地異で、予定より早く医院を閉めた場合は、使用者の責に帰すべき事由にならないため、従業員に休業手当を支払う必要はありません。

 

また、労働基準法第26条の休業手当はパート・アルバイトにも適用されますので、使用者の責に帰すべき事由の休業の場合は、パート・アルバイトに対しての賃金の支払いも発生する可能性があります。

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