犯人探しや厳しい懲罰が「失敗の隠蔽」を引き起こす
犯人探しや懲罰をすることでいちばん怖いのは、失敗を隠蔽するようになることです。失敗が隠蔽されて「なかったこと」になってしまうと潜在的な問題が表に出てきませんから、いつかとんでもない大失敗につながる危険性が高くなります。
ですから組織全体のことを考えても、犯人探しや厳しい懲罰はできる限りしないほうがいいのです。失敗した人が、自らの失敗を振り返って詳細に語るためには、周囲の人がそれを受け入れて「存分に言い訳できる環境」をつくることが大事です。
特に日本の社会では言い訳は良くないこととされ、よく「言い訳をするな」などと言われますが、むしろ失敗した人からは言い訳を十分に聞き出したほうがいいのです。
もしもその人が眠くてミスをしたのだとすれば、その勤務体制に不備があるのかもしれませんし、職場でのストレスが溜まって不注意になっていたかもしれません。あるいは、上司のパワハラ気質が関係しているのかもしれないのです。
失敗の背景を探っていけば失敗に至るまでの必然の道筋が分かりますから、当人のためにはもちろん、その組織のためにもなるのです。
医療界では、失敗が許されないからこそ原因を徹底的に究明することが重要になってきますが、これは企業でも学校でも家庭でも同じだと思います。
失敗したときには萎縮して精神的に参ってしまう人もいますから、そういう人に対しては、あえて周囲が言いやすい環境をつくってあげることも必要です。「失敗した? バカヤロー!」ではなく、なぜそうなってしまったのかを丁寧にヒアリングしていくのです。
失敗した人は自分の言い分を主張したくても、心情的に言い出しにくいということもありますので、相手が失敗したときこそよく耳を傾けることが大事です。
威圧的な態度をとると言葉が出てきませんから、聞く側は「傾聴」を越えた「敬聴」くらいの気持ちでいることが大事だと思っています。失敗を、当人の謝罪とその場の対策だけで終わらせてしまうのではなく、その先を考えるきっかけにするということです。
郭 樟吾
脳神経外科東横浜病院 副院長
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