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令和3年度税制改正大綱には「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」と掲載されました。さらに令和4年度税制改正大綱にも、ほぼ同様の内容が記載されました。現在、議論されている「相続税と贈与税の一体化」とは。みていきましょう。

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そもそも相続税とは?贈与税とは?

2021年(令和3年)12月に公表された令和4年度税制改正大綱では、具体的な改正案は発表されず、前年とほぼ同じ内容が記載されました。しかしこれは、相続税と贈与税の一体化が令和4年でも引き続き検討されることを意味します。

 

では、なぜ相続税と贈与税を一体化する必要があるのでしょうか? 現行の相続税と贈与税の仕組みやそれぞれの存在意義、今後の課題に分けて解説します。

現行の相続税と贈与税

相続税は、一定額以上の遺産を相続した人に課せられる税金です。法律によって定められた割合通りに分けたときの遺産が多いほど、税率は高くなります。そこで、生きているうちに財産を贈与(生前贈与)すると、相続財産が減って相続税の負担を軽減できます。

 

ただし暦年(1月1日から12月31日)で贈与された財産が、110万円を超えると贈与税が課せられます(暦年課税)。そこで、相続税の負担を軽減するために、生前贈与をするときは、年間で110万円以内の贈与を繰り返す「暦年贈与」が行われるのです。

 

また、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上(令和4年4月以降18歳以上)の子どもや孫へ贈与をするときは「相続時精算課税制度」の選択が可能です。相続時精算課税制度では、累計で2,500万円までの財産を何度でも非課税で贈与できる代わりに、遺産を相続したとき、非課税で贈与された財産を含めたうえで相続税を計算します。

相続税と贈与税の存在意義と課題

相続税と贈与税は、資産が一部の富裕層にかたよらないよう、再分配する重要な役割を果たしています。また相続税の負担を減らすための贈与を防止するために、贈与税率は高く設定されています。

 

しかし富裕層は、贈与税がかからない範囲で財産を分割で贈与し、相続税の負担を抑えているのが実情です。相続税と贈与税が、資産を再分配する仕組みとして適切に機能しなければ、親が受けていた所得格差が、子どもや孫にもそのまま引き継がれることになり、格差の固定化につながる恐れがあります。

 

そこで、相続税と贈与税が富を再分配する仕組みとして機能するよう、諸外国の制度も参考にしながら税制の一体化が検討されているのです。

諸外国の税制

日本においては、相続開始前の3年間に贈与された財産を相続財産に加えて相続税を計算します。そのため相続が近いと考えて、急いで家族に財産を贈与しても、相続税の節税効果はあまり得られません。

 

一方で諸外国では、日本よりも加算の対象となる期間が長く設定されています。例えばイギリスでは、相続開始前の7年間、フランスでは相続開始前の15年間で贈与された財産も加算されて相続税が計算されます。

 

またアメリカでは、一生涯にわたって贈与された財産と、相続によって取得した財産の合計額が一定金額を超えるときに課税の対象となります。つまり相続税と贈与税が完全に一体となっているのです。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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