金融庁によると、36の金融機関で顧客の4割が投資損失
以上が資産形成の現場の姿です。大げさに見えるかもしれませんが、これが私が日々見てきた真実の姿です。金融機関のあまりの販売手法の強引さに金融庁が業界に手数料の開示を求めたり、強引な販売を自粛する要請を出すこともしばしばで、本当にひどいケースでは業務停止命令や業務改善命令が下ることもあるなど、資産形成の販売の現場は熾烈を極めました。
図表4、5はこれまでの金融機関の販売手法がどれだけ顧客不在だったかを物語るデータです。
金融庁が2018年に公表したもので、金融機関から投資信託を購入した顧客の何割が利益を得ているかを明らかにするために、投資成果を分析したものです。
図表4、5のとおり、投資信託を販売した顧客の割合を開示した36の金融機関では、単純平均で4割もの顧客が運用損益がマイナス、つまり投資損失でした。
含み益のある顧客が9割を超える金融機関がある一方で、なんと3割台にとどまる金融機関もあり、格差が浮き彫りにされました。含み益がある顧客が3割台しかいないという金融機関はビジネスモデルが顧客本位でなかったと言われても仕方ないと思います。
目につくのは上位3社が大手金融機関系列に属さない独立系であることです。逆に最も問題視される点は大手金融機関系列会社が軒並み下位に沈んだことです。
しかし、残念ながら、これは当然の結果と言えます。何よりこれまで正しい方法での資産形成が何一つやってこられていませんでしたから。
日本には正しくリテラシーを学びながら主体的に資産形成するという投資のセオリーといえる土壌がなく、「お金を働かせる」「リスクを取らないとリターンはない」という基本的な発想すら存在しませんでした。
金融機関や不動産会社の強い勧誘を受けたことのあるほとんどの経営者で、株式や不動産といった資産形成をいったんはカジってはみたという方も、その金融機関や不動産会社という、本来資産形成の一翼を担うべき業界の人たちが、顧客不在の販売スタイルを続けたことで顧客を裏切ってきたことに気づいたころには時すでに遅く、セオリーである資産ポートフォリオの発想がないのに、いきなり投資を実践することとなり、その結果、一つ一つの資産形成すら予定通りにはいかず一発KOになったり、いずれかの資産に偏ってしまったり、といった失敗を積み重ねるばかりで、成功体験が蓄積されることもありませんでした。
そしてリスクを取ることへの心を閉ざした経営者たちは、最終的に上にも下にも「値動きをしない」資産、ということで元本保証である預金に、消去法的に回帰してきてしまった─これが、私がアドバイスしているほとんどすべての中小企業で起こったことです。
そろそろお金に関することは教育で扱わない、というタブーを取り除かなかなければいよいよ大変なことになることは間違いありません。
これまで資産形成で起こってしまったことは、とても残念です。しかし、現状の酷さを認識して、これを機に企業の資産形成に対する考え方が180度変わっていくならば、まだ間に合います。
三反田 純一郎
税理士
宅地建物取引士
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