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海外移住や財産を国外に持ち出すことで贈与税の課税から逃れようとする富裕層に対して、国税庁は法律を数年単位で改正し対応していきました。また海外送金で預金の贈与をした場合、税務署の調査対象になりやすいといわれています。みていきましょう。

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    税務署が海外送金の贈与を把握する手法

    国税組織が海外資産の情報を集める手段は4種類あります。

    海外資産の保有状況を申告する義務がある国外財産調書

    日本の居住者で国外資産の合計が5,000万円を超える人は、毎年3月15日までに税務署に対して国外財産調書を提出しなければなりません。国外財産調書には、国外財産の種類や価額、その他必要な事項を記載する必要があり、期限内に提出しなかった場合の罰則規定も存在します。

     

    また、国外財産調書を提出しないで税務調査の指摘を受けた場合には、過少申告加算税の税率が5%上乗せされ、税負担が重くなります。

     

    一方で、国外財産調書を提出した人が税務調査により指摘を受けた場合、国外財産調書の財産に関する指摘部分については、過少申告加算税の税率が5%減税されます。

    100万円を超える海外送金の情報は金融機関が情報提供をする

    海外へ100万円を超える預金送金をする場合、金融機関は国外送金等調書を提出しなければなりません。

     

    国外送金等調書には、送受金者の住所・氏名、受取金融機関名などを記載するため、税務署は調書の情報によって海外に保有する銀行口座などを把握できます。

    100万円以下の海外送金は銀行調査により情報を掴む

    1回の海外への送受金の金額が100万円以下であれば、金融機関から国外送金等調書が提出されることはありません。

     

    しかし、税務署は税務調査により銀行を調査することができますので、送金した銀行口座を調べれば海外送金の事績を確認できます。

     

    また、銀行調査では通帳だけでなく銀行が保有している契約書などの書類も確認しますので、100万円以下の国外送金であっても税務署にバレない保証はありません。

    日本はアメリカなど租税条約を結んでいる国と情報交換をしている

    自国にある財産を海外に持ち出して租税回避する方法は、節税対策として世界的に利用されています。そのため、租税条約を結んでいる国との間で積極的に情報交換や情報提供が行われています。

     

    日本はアメリカをはじめ、多くの国と租税条約を結んでおり、他国との情報交換の内容は3種類あります。

     

    • 要請に基づく情報交換
    • 自発的情報交換
    • 自動的情報交換

    海外送金は贈与税・相続税対策にはならない

    ここまでの内容を読んでお分かりになるように、海外に財産を持ち出したり海外に住んでいる子や孫に贈与したりしても、基礎控除を超えてしまえばほとんどの方は日本の贈与税・相続税の対象になります。

     

    むしろ金融機関の国外送金等調書提出義務により、海外への預金移動や送金は簡単に税務署に把握されてしまいます。

     

    それにも関わらず「海外送金=節税できる」というイメージを持つ方が多いのは、かつてそのような方法で節税が行われていた時代もあったためです。

     

    特定の方法で過度な節税が行われだすと、関連制度には見直しが入ります。特に海外資産や海外送金といった国外財産については、かつて節税対策として利用されることが多かったため毎年のように変更されています。

     

    節税対策を取りたいのであれば、安易に海外送金は行わず、まずは贈与税・相続税を専門にしている税理士にお尋ねください。

     

     

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    本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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