前回は、自身の死後の事務手続きなどを委託できる「死後事務委任契約」について説明しました。今回は、訴訟などのトラブルはできる限り生前に処理しておくべき理由を見ていきます。

裁判沙汰は和解できるよう「譲歩」も大切

私が知っている隠しごとの中には「妻に訴訟を隠していた」というケースがあります。本業の経営は好調だったのですが、ちょっとした不手際から損害賠償を求めて取引先から訴えられたのです。

 

訴訟の中には判決が出るまでに何年もかかるものがあります。その間に社長が亡くなってしまうと、隠していた裁判のことが遺族にわかってしまいます。注意しておきたいのは、役員への代表訴訟など大きな金額の訴訟の場合です。

 

代表訴訟提起後、判決が確定する前に役員が亡くなった場合、遺族が賠償責任を負うこともあり得ます。役員賠償責任をカバーする保険に入るなどの対応が有効ですが、妻や子供たちのために、訴訟などの面倒ごとはできる限り生前に処理しておくか、和解できるよう譲歩するのがおすすめです。

訴訟以外の「もめごと」も生前にきちんと処理しておく

訴訟と似たケースでは、所有する賃貸物件についての面倒なもめごとを隠している社長もいました。妻が反対する中、ワンルームマンションを一棟買いしたところ、賃料を支払わない入居者が何人かいたというお話でした。そのことが妻にばれないよう、本業からお金を融通して誤魔化していました。

 

ただこのケースも、相続時にはそのマンションを妻や子供たちが引き継ぐことになるので、賃料の滞納があることはわかってしまいますし、ご家族は家賃を支払わない入居者への対応に苦労することになります。

 

訴訟と同じく、こういったもめごとも生前にきちんと処理しておくことが大切です。具体的には、管理会社を有効に活用すれば良いでしょう。期限を切って回収するよう求め、もし回収できない時には管理会社を変えてみてもよいでしょう。

本連載は、2015年10月27日刊行の書籍『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

佐野 明彦

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな男性も妻や家族に隠し続けていることの一つや二つはあるものです。妻からの理解が得にくいと思って秘密にしている趣味、誰にも存在を教えていない預金口座や現金、借金、あるいは愛人や隠し子、さらには彼らが住んでいる…

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