信頼できる人に秘密を明かして、処分や管理を委託
前回に引き続き、相続における「隠しごと対策」の3つのレベルを見ていきます。
機密度MIDDLE:事業を受け継ぐ子供や弁護士など信頼の置ける数名には知られてもいい
〈対応〉
●信頼できる「協力者」を選任して、正しい情報を共有する
●死亡後の財産管理について、「協力者」と取り決めを行い処分や管理を委託する
こちらは前項に比べて隠しごとを守る度合いを一段緩め、息子や弁護士など信頼できる人間にだけは秘密を明かして協力してもらうというものです。秘密を死後も守り抜くことは非常に困難です。生前でもかなり難しいことですが、亡くなった後は事情に応じた対策がとれませんから、さらに難易度が高くなります。
たとえば生前であれば、トラブルが発生した時には話し合い、お互いが納得できる落としどころを探ることができます。しかし、死後はそういった対応ができないため、不満を持つ人がすぐにヒートアップしてしまうことから隠しごとが公にされてしまうのです。
経営者である社長にとって相続対策は必須です。自社株や事業用資産を後継者にスムーズに承継させるためには、しっかりとした計画や関係者間の調整、納税資金の手当てなどが必要になります。
ある年齢に達したら、相続対策を始めることになりますから、その際には後継者の選任と同時に、隠しごとの対策を頼める人間を密かに見つけるとよいでしょう。その上で相続の際に妻や家族、従業員、親戚や友人などに隠しごとがばれないよう、秘密を守る手伝いをしてもらうのです。
事業を受け継ぐ子供なら、相続においても中心となって差配するのが自然です。そんな子供の協力があれば、秘密を隠し通すのはそれほど難しいことではなくなります。
社長の借金についても、知っていれば裁判沙汰にならないよう債権者と話し合うことが可能ですし、隠し口座や現金についてもうまく処理することができます。子供以外では腹心の部下や弁護士に依頼するという方法もあります。
家族に協力を求めて、秘密の漏えいを防ぐ
機密度LOW:社員や第三者などへの漏洩を防ぐ
〈対応〉
●隠しごとを妻に明かして情報を共有し、協力を求める
●妻や家族に対する十分なケアを行う
隠しごとの事柄によっては、秘密を守るレベルをここまで引き下げるのもありだと思います。とにかく世間体だけは守れるよう家族に協力を求めることで、対策がとりやすくなるだけでなく、思わぬところから秘密が漏れる可能性も抑えられます。
たとえば、借金などが相続発生時に初めて露呈すると家族も大混乱します。一般的な家族経営の会社の場合、亡くなった社長の個人的な借入を始末できていなかったことが外部に洩れると、一族の社会的信用を失いかねません。その場合、事前に家族が知っていれば、隠しごとによる影響を小さく抑えられます。
また、愛人や隠し子への対応なども、家族が承知の上で処置をすれば、取引先や従業員への悪影響を排除できます。その上、社長自身の口から事情を説明できますから、生前にさまざまな「つぐない」をすることも可能でしょう。
問題解決に向けてとりあえず一致団結するだけかもしれませんが、打ち明けることにより家族の絆が深まることもあり得ます。