前回は、争続問題に発展させない「隠しごと」対策について説明をしました。今回は、「隠しごと」を抱えるオーナー社長のための相続対策について見ていきます。

社長の死後に「株式買取請求」が起こると・・・

株式の譲渡承認等に基づく譲渡承認請求や買取請求も隠しごとがばれてしまうトラブルの一つです。

 

もともと他人名義のまま放置していることが、事態をややこしくしている最大の問題点であり、いわばいつ爆発するかわからない不発弾を抱えているようなものです。ずっと株式を抱えてくれているなら、その時点では問題は顕在化しないので、社長としては株式買取請求という爆発が起きないよう、手当てをしておくことが大切です。

 

社長の死後に株式買取請求が起きれば、株式の持ち主はどういった人物で、どのような経緯で株式を持つようになったのかと後継者は疑問に思うでしょう。

 

単に他人名義にしていたことを忘れていただけで、名義株が発行された事情が理解できるならそれほど大きな問題にはなりませんが、家族と折り合いの悪い人物だからと秘密にしていた場合などは、家族に嫌な思いをさせてしまいます。

 

また株式買取請求を出されたら、市場価格に近い金額で買い取ることになるかもしれません。会社にとっては大きなダメージとなるので、後継者が困らないよう、さまざまな工夫を凝らして「爆発」を防ぐことは社長の責務と言えます。

遺贈や死因贈与を受けた人の存在は、相続人に伝わる

相続税の申告書には子供や兄弟姉妹などの他、遺贈や死因贈与を受けた人の名前も書き込む必要があります。時々混同されますが、「相続」と「遺贈」「死因贈与」は別物です。妻や子供、兄弟姉妹など「法律で定められた相続権を持つ人」が遺産を受け取るのが「相続」です。

 

これに対して「遺贈」「死因贈与」は、主に相続権のない人が遺言書の指定などにより遺産を受け取ることを言います。「遺贈」と「死因贈与」は、「遺贈」が被相続人の一方的な遺言での行為であるのに対して、「死因贈与」は両者の合意が必要な贈与であるという違いがあるだけです。

 

相続税の申告書には、相続した人と遺贈または死因贈与を受けた人全員の名前を書く必要があります。また、死因贈与は贈与なので相続税はかからないと思いがちですが、亡くなった後の贈与となりますので、遺贈と同様、相続税の申告が必要です。ですから家族との関係が悪い人に何かを遺贈または死因贈与した場合、申告書に名前が載るため、相続人にその人の存在が発覚することになります。

 

あまり知られていませんが、相続発生時に何の工夫もなく誰かに財産を渡そうとすると、相続財産を受ける人の全員が知ることになるので要注意です。相続税が発生しないように仕組んで申告書を作成しないようにしても、財産の名義変更のため、遺言書などが必要になります。やはりそこにも相続人以外の遺贈や死因贈与を受けた人の名前が出てくるのです。

本連載は、2015年10月27日刊行の書籍『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

佐野 明彦

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな男性も妻や家族に隠し続けていることの一つや二つはあるものです。妻からの理解が得にくいと思って秘密にしている趣味、誰にも存在を教えていない預金口座や現金、借金、あるいは愛人や隠し子、さらには彼らが住んでいる…

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