安易なリスクの取りすぎは「悲惨な結果」を招く
積極的な資産運用は必要ですが、リスクを目いっぱい取れば良いかというと、そうでもありません。リスクが高い金融商品は、うまくいけば高いリターンを得られます。例えば、株で短期間に急騰する銘柄を絶妙なタイミングで売買できれば、短期間で資産を2倍3倍に増やすことも可能です。
例えば、がん治療薬やがんマーカーの開発を手掛けるオンコリスバイオファーマ(マザーズ・4588)は、2021年3月23日に「開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬に関し、変異型コロナウイルスに対する有効性を実験で確認できた」と発表しました。
これが材料視され、23日終値で1134円だった株価は、翌24日高値で1434円まで急騰しました。その後4月下旬から再び大きく上昇し、6月25日には高値1938円で天井を打ってから急落し、10月6日には安値で1008円をつけました。10月19日には、中外製薬との間に締結した、がんのウイルス療法「テロメライシン」のライセンス契約を解消することを発表しました。
すると、1444円だった株価は2日連続のストップ安となり、21日には694円まで下落しました。
バイオ株といえるオンコリスバイオファーマは、2019年にも1月30日の1014円から3月14日には高値で4410円をつけるなど、1か月強で3倍高となる急騰となりましたが、4月5日には安値で1702円まで下げるなど激しい動きとなりました。またコロナショックとなった2020年春も、4月~6月にかけて大きな急騰がありました。
急騰前の安いうちから株を持っていたのであれば、大きな利益を得られたことになります。しかし、多くの人は急騰したのを見て、「これなら儲かりそうだ」と思ってあわてて買ったことでしょう。しかし、その後はどんどん下がり、ずっと低い水準で推移しました(図表2)。
この例のように、短期間で急騰するもののその後は急落したり、ずるずると下げるというのはよく見られるパターンです。したがって、急騰した銘柄を見てあわてて飛び乗っても高いリスクを取ることになり、失敗したときの損失も非常に大きくなりがちです。
大きな失敗を減らし、時間を無駄にしない
前述の例のように、短期的な利益を目当てにギャンブル的な株式投資を行うこともあります。しかし、資産形成のための株なら、もっと中長期的な視点にたって、資産を増やしていくようにする必要があります。
中長期的に資産を増やすためには、大きな失敗をできるだけ減らすことが肝要です。なぜなら、大きく失敗すると、それを取り返すのに時間がかかってしまうからです。
例えば、大失敗して元手の100万円を、半分の50万円にしてしまったとします。ここで、資産を元の100万円に戻すには、50万円を2倍にしなければなりません。
5~10%程度の値上がりならよくあることですが、2倍はそう多くはないので、時間をかけて利益を積み上げていくことになるでしょう。このように、大きな損失を出すほど、それを取り返すには大きな利益が必要になり、取り返すのが難しくなります(図表3)。その分時間の浪費につながります。
大きな失敗を減らすには、大きすぎるリスクを取りにいかないことです。例えば、前述の例のように、急騰した銘柄に飛び乗って買うような買い方は慎むべきだといえます。
ファイナンシャルプランナー(CFP)、著述家、個人投資家
藤本 壱
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