経済学の視点から「お金と幸せ」の関係を考えてみる
若いほど「経験ポイント」を得やすい
マクロ経済学では、「限界効用」といって、同じ行動を続けると満足度が低下するとされています。最初に食べたステーキがおいしくて満足したとしても、2回目、3回目に同じステーキを食べると最初の満足度を超えず、幸福度はどんどん低減してしまいます。それでも、人は最初に経験した満足度を求めるため、お金をどんどん使ってしまうのです。
その欲望に従ってしまうと支出は際限なく増えますし、サイドFIREを行うための資産が確保できなくなります。節約はあくまで運用資金の確保のためにあります。
一方で、年齢が上がるにつれて得られる経験が少なくなるという問題があります。FIRE達成には20年ほどの年月がかかるため、30歳で資産運用を始めると、サイドFIRE達成時には50歳になります。
この歳になると、20~30代に比べ健康面での不調が増えて行動の選択肢が制限されます。たとえば、「死ぬまでにいかにお金を使い切るか」という新しい視点を提示した米国の経営者、ビル・パーキンスは、若いころは旅に出て格安のユースホステルに泊まり、同世代の旅人と和気あいあいと楽しむことができる一方で、30歳になると責任のある立場に立つため、長期的な休みが取りづらいと語られています。また、簡素な宿泊施設に泊まったり、大荷物を抱えて移動したりすることが体力的に難しい点も挙げられています。
若いころは多少の無茶ができるため、バックパックといった格安旅行が可能です。そうして得た経験は、「新しい価値観を知ったきっかけ」として後々の人生を豊かにすることができます。しかし、経験で得られるもの──「経験ポイント」とも言えるものが、年齢の上昇とともに下がってしまうのです。自己投資は、若いうちこそ後々の人生で役立ちます。
このように、健康と時間はトレードオフの関係があることも念頭に入れる必要があります。ムダな支出を避けられて満足という考えもありますが、若いうちに経験できることを犠牲にするのもよくありません。そこをうまくバランスを取って、メリハリをつける必要があります。
しかし、この判断基準は人によって異なります。2つのバランスをふまえたうえでいつサイドFIREを行うのか。この点はサイドFIRE、節約に取り組むうえで最も考えるべきことのひとつだと思います。
頼藤 太希
株式会社 Money & You 代表取締役
高山 一恵
株式会社 Money & You 取締役
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