秘密証書遺言、公正証書遺言のメリット・デメリットとは?

前回は、遺言書の中で最もメジャーと言える「自筆証書遺言」の特徴を説明しました。今回は、「秘密証書遺言」と「公正証書遺言」の特徴と、そのメリット・デメリットについて見ていきます。

遺言の内容を誰にも知られずに済む「秘密証書遺言」

秘密証書遺言とは、遺言の内容を記載した文書に署名捺印したものを、封筒に入れて口を閉じ、文書に押したのと同じハンコで割印を押したものを、公証役場に提出することで行います。

 

提出には公証人と証人2人が立ち会い、自分の名前と住所、および「これは間違いなく自分の遺言書です」ということを申し述べて、証人2人と共にその封筒に署名捺印します。こうすることによって、遺言書の内容は、誰にも知られることなく秘密のままにしておくことができます。

 

秘密証書遺言のメリットは、自筆証書遺言とは異なり、パソコンやワープロによる作成や、第三者によって作られたものであってもいいという点にあります。

 

デメリットは、公証人が内容を確認することができないため、遺言書の内容に法律的な不備があって無効になったり、相続人間の紛争の種になったりするリスクがあるという点が挙げられます。

 

また、自筆証書遺言と同じように、この遺言書を見つけた人は、家庭裁判所に届け出て、検認手続きを受けなければなりません。検認を受けるまでの煩雑さも、自筆証書遺言と同様です。

手間はかかるが、安全確実な「公正証書遺言」

公正証書遺言は、公証人と証人2人の立ち会いのもとで作成される遺言書で、近年、非常に注目を集めています。

 

平成10年に5万5000件弱だった公正証書遺言の年間作成件数は、10年後の平成20年に7万8000件弱、平成26年には10万4000件強と、16年間で1.9倍に増えました。一般の人にも、公正証書遺言の果たす役割がよく知られるようになったためでしょう。

 

公正証書遺言のメリットは、次の通りです。

 

①法律の専門家が作成するので、信頼度が高い

 

公正証書遺言は、遺言者が公証人の前で遺言の内容を口述し、それに基づいて公証人が正確に文章にまとめて作成します。

 

一般の人にとって、遺言書作成の難しさのひとつは、何をどうまとめていいか分からない、ということにあるのではないでしょうか。その点、公正証書遺言は、公証人が遺言者の伝えたいことを引き出し、うまく文章にまとめてくれるので、自分では文章が書けない人でも作成が可能です。

 

公証人は、裁判官や検察官など法律の実務に長く携わってきた人たちで、法律に関する正しい知識と豊富な経験を持っています。従って複雑な事実関係であっても、法律的に見てきちんと整理された内容の遺言書を作成することができるため、形式上の不備によって遺言が無効になることはあり得ません。

 

自筆証書遺言や秘密証書遺言に比べて、公正証書遺言は、安全確実な遺言方式といえます。

 

②家庭裁判所の検認が不要

 

公正証書遺言は、自筆証書遺言や秘密証書遺言で必要とされる、家庭裁判所で検認の手続きを経る必要がありません。従って、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。

 

③原本が保管される

 

公正証書遺言は、原本が必ず公証役場に保管されるため、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配がありません。紛失した場合でも、再発行が可能です。

 

④出張による作成も可能

 

高齢で体力が弱ったり、病気で入院中だったりなどの理由で、公証役場に出向くことが困難な場合でも、公正証書遺言は作成が可能です。公証人が、遺言者の自宅や病院などに出張するシステムがあるためです。

 

本人が署名できない場合には、法律の定めにより、公証人が遺言者の署名を代筆することができます。

 

⑤証人がいない場合は、公証役場が紹介してくれる

 

公正証書遺言の作成にあたっては、遺言者の真意を確保するため、証人2人の立ち会いが義務づけられています。

 

ただし、身近に証人を頼める人がいないという人も多いことでしょう。その場合は、公証役場に頼んで、証人を務めてくれる人を紹介してもらうことができます。

 

このように、公正証書遺言は自筆証書遺言や秘密証書遺言と比べて信頼度が高く、メリットが多い遺言形式です。デメリットがあるとすれば、作成に時間がかかるという点と、公証役場で費用がかかるという点です。

 

また、自分で公証役場に赴いて一から作成してもらうよりも、あらかじめ弁護士等の法律の専門家に頼んで草稿を作っておいてもらった方が流れがスムーズになりますが、その場合は別途、専門家に支払う報酬が必要になります。

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    南青山 M’s 法律会計事務所 代表社員
    一般社団法人社長の終活研究会 代表理事 弁護士
    公認会計士

    弁護士・公認会計士。南青山M’s法律会計事務所代表。芦屋大学経営教育学部客員教授。
    1973年愛媛県生まれ。1995年一橋大学経済学部卒業。2006年成蹊大学にて法務博士号取得。1995年監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)入社、上場企業の監査、M&A等に携わる。その後、会計事務所、法律事務所勤務等を経て2009年に南青山M’s法律会計事務所を設立。個人、企業にとって身近な法律問題はもちろん、税務問題、会計問題、それらが絡み合う複雑な問題についても、冷静に問題を分析し、依頼者にとって最も利益となる問題の解決方法を提案、実践している。著書に『ドロ沼相続の出口』『老後の財産は「任意後見」で守りなさい』(幻冬舎)、『今すぐ取りかかりたい 最高の終活』(青月社、共著)。

    著者紹介

    連載老後の財産管理に有用な「死後事務委任契約」「遺言」の活用術

    本連載は、2015年11月25日刊行の書籍『老後の財産は「任意後見」で守りなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    老後の財産は 「任意後見」で守りなさい

    老後の財産は 「任意後見」で守りなさい

    眞鍋 淳也

    幻冬舎メディアコンサルティング

    昨今、高齢者を狙った詐欺や「争続」が新聞やテレビなどのメディアで盛んに取り沙汰され、老後の財産管理に対する不安が高まっています。高齢になると判断能力が低下してしまい、望まないかたちで財産を失ってしまうケースは多…

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