前妻の子らと後妻が「自宅」をめぐって争うことに…
病気で死亡した夫とA子さんの間には、3人の子どもがいます。3人とも未婚で、A子さんと共に、夫名義の戸建て住宅に住んでいます。戸建て住宅は30年ローンを組んで、10年前に購入したものですが、夫が死亡し団体信用生命保険の死亡保険金が下りたため、ローンは消滅しました。
死亡した夫には離婚歴があり、前妻との間に2人の子どもがいます。自宅の名義をA子さんに変更するために、その旨を明記した遺産分割協議書を前妻の子2人に送ったところ、「自分たちにも相続権がある」と法定相続分を要求されてしまいました。
死亡した夫には、前妻の子2人に後妻、後妻の子3人と、複雑な関係にある相続人が多数いたにも拘らず、遺言で自宅を誰に相続させるか定めておかなかったために、トラブルになってしまいました。
「誰が」「何を」相続するか――公正証書遺言で明確に指定
前妻の子たちは、後妻に対していい感情を抱いていることはまずありません。そこへ「相続放棄してほしい」という要求をしても、通ることはほとんどないと考えた方がいいでしょう。
父親である夫が、生前にそのことをよくわきまえて、公正証書遺言で相続人それぞれの相続財産を、指定しておくべきでした。
なお、このようなケースでは、前妻の子に遺留分があるため、そのことにも配慮しておく必要があります。すなわち遺言書に前妻の子に遺留分相当額を相続させる旨、明記しておくことです。そうした配慮が、トラブルを未然に防ぐことにつながります。