(※写真はイメージです/PIXTA)

夫が急逝し、間を置かず舅も逝去。舅の相続人は、姑、義妹、そして亡き夫の子2人の合計4人。しかし姑は、舅が残したメモを無視し、全財産をひとりで相続します。「私が死んだらあげるから」との言葉に、長男の嫁の立場ではなにもいえません。舅の希望通りの内容で自分の子どもへ相続させる方法はあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

弁護士は笑顔だが…「本当にこのままで大丈夫なの?」

義父の相続では、すべての財産を義母のものとし、伊藤さんの子どもたちには相続財産はありませんでした。

 

申告手続きは、義父が長年付き合ってきた税理士ではなく、義妹の夫の友人だという弁護士が指定した税理士が行いました。税理士から事情の申し送りを受けていた弁護士は、義母が亡くなったときには賃貸ビルを亡き長男の2人の子どもに贈与する旨を明記した死因贈与契約を締結し、公正証書として贈与予約の仮登記を設定しました。弁護士は「これで一段落ですね」と笑顔を見せ、一連の手続きは完了しました。

 

しかし伊藤さんは、弁護士が進めた一連の手続きの内容が理解できず、本当にこのままにしておいて大丈夫なのか、不安がぬぐえませんでした。

 

筆者はそれに対し、伊藤さんの状況から、もし義母が〈賃貸ビルは義妹に〉と記した遺言書を作成すればそれが実現してしまうこと、結局は義妹の協力がないと登記ができない状況にあることを説明しました。

 

伊藤さんの子どもたちに賃貸ビルを相続させるのであれば、現状のままでは万全とはいえません。子どもたちに賃貸ビルを確実に相続させるには、義母に、義父が書き残していた「賃貸ビルは長男の子ども2人に等分に相続させる」という内容の遺言書を作ってもらうことが必要です。また、それについての義妹の同意も得ておくことが重要になります。

 

筆者は、伊藤さんと義母、義妹、伊藤さんの2人の子どもたちと話し合いの席を設け、そこで「義母の相続の際には、賃貸ビルは伊藤さんの2人の子どもが、それ以外の資産はすべて義妹が相続する」という内容で、円満に合意を得ることができました。

 

また、上記の内容をまとめた公正証書遺言も作成できたので、万一の際にもスムーズな相続手続きが可能です。

親族間で話し合い、納得し、公正証書遺言を作成

将来相続が起こることがわかっていても「うちは大丈夫」とばかりに放置している家族は少なくありません。しかし、時間がたてば、相続人ひとりひとりの事情も変化します。思いやりを持ったおおらかな気持ちで遺産分割協議の席につけるとは限りません。

 

伊藤さんが心配したのは、義母の言葉が口約束になることでした。いまは義母の言葉に黙って従っている義妹ですが、もし今後、義妹の生活になにか事情が生じれば、自分も賃貸ビルがほしいと考えるかもしれず、また、義母が義妹に有利な遺言書を書けば、伊藤さんの子どもたちにはどうしようもありません。

 

相続の問題を先送りにしないためにも、家族間での話し合いを行うことは重要です。また、話し合った内容は公正証書遺言として残しておけば、将来揉めることもなくなります。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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