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世界における貧富格差の現状
我々は1割の富裕層が8割の富を所有する世界で暮らしているようだ。フランスの経済学者ルカ・シャンセル(Lucas Chancel)氏やトマ・ピケティ(Thomas Piketty)氏らの運営する世界不平等研究所(World Inequality Lab)が発表した「世界不平等レポート2022(World Inequality Report 2022)」によると、世界トップ10%の裕福な家庭が所有する富(Wealth)は成人一人当たり平均550,920ユーロ(日本円に換算すると約7,790万円、€1PPP=JPY141.4)で全体の75.6%を占めている。
他方、世界の中央値を下回る50%の貧しい家庭が所有する富は成人一人当たり平均2,908ユーロ(日本円に換算すると約41万円)で全体の2%に過ぎない(図表1)。
なお、世界トップ10%の所得は成人一人当たり平均87,200ユーロ(日本円に換算すると約1,233万円)であるのに対し、世界ボトム50%の所得は同じく2,800ユーロ(日本円に換算すると約40万円)と31倍の差が生じている(図表2)。
日本および関係諸国における貧富格差の現状
前述した「世界不平等レポート2022」には世界全体の分析に加えて国別の分析も掲載されている。
まず我々が暮らす日本の状況を見ると(図表3)、全人口の富は成人一人当たり平均2,566万円で世界全体の2.5倍の富を所有している。
階層別に見るとボトム50%が世界全体の7.2倍、中間40%が4.0倍、トップ10%が1.9倍、トップ1%が1.6倍となっており、世界全体に比べて貧富格差が小さいことが分かる。なお、韓国の富の分布は日本のそれに極めて近い構造となっている。
世界一の経済大国である米国の状況を見ると、全人口の富は成人一人当たり平均4,010万円で日本の1.6倍の富を所有している。
階層別に見るとボトム50%が日本の0.4倍、中間40%が1.2倍、トップ10%が1.9倍、トップ1%が2.2倍となっており、日本に比べて貧富格差が大きいことが分かる。なお、米国のボトム50%の富は中国のそれをやや下回っている。
また、世界第2位の経済大国である中国の状況を見ると、全人口の富は成人一人当たり平均1,217万円で世界全体よりやや多く1.2倍だが、日本の半分(0.5倍)に留まる。
階層別に見るとボトム50%が日本の0.5倍、中間40%が0.3倍、トップ10%が0.6倍、トップ1%が0.6倍となっており、日本に比べて中間40%の富の少なさが目立つ。