「結露問題」で裁判に…忘れられがちな「あるコスト」
建設コストでつい忘れがちなのがランニングコスト(維持費)である。工場・倉庫が投資対象である以上、建物をつくるためのイニシャルコスト(工事費)は一定期間で回収し、利益を生み出さなければならない。
ところが実際には、「どのような建物を建てるか」にばかり意識が集中してしまい、ランニングコストが後回しになっているケースがよくある。
これまで従業員が経験を駆使して臨機応変に管理してきた温度設定を自動化した結果、エネルギーコストが膨らんだ事例もある。新工場の完成形に完璧さを求めるあまり、稼働後のコストまで考えが及んでいなかったケースといえよう。
できるだけ早い段階から「イニシャルコスト+ランニングコスト=トータルコスト(これをライフサイクルコストという)」という意識をもつことで、設備の選定や仕様設計の検討、人の手でできることと機械化することの見極めなど、多くの選択肢でより最適な判断につなげることができる。
▼結露
食品工場や冷蔵倉庫における最大の課題は結露といってよい。建物の結露については、多くの関係者の失敗や苦労によって膨大な知見が蓄積されていると思われるが、体系的に整理されてはおらず、結露を完全に防ぐノウハウはおそらく確立されていない。
特に夏場の気温上昇が著しいわが国においては、今後結露トラブルは益々増加すると考えられる。現に結露問題に関わる争いも絶えない。
結露問題は建築および設備両面を踏まえて総合的に解決すべき課題である。結露は第一義的には空調の問題であるから、空調設備をもって解決しようと思いがちであるが、試しに機械設備会社に結露について相談してみればよい。単独で有効な解決策が得られるケースはあまりない。
一方で建築だけでも当然問題は解消しない。
結露問題は建物を使う施主の理解と協力が欠かせない。これら複数の関係者の知恵と協力を結集して解決を図るべき課題である。
結露問題によって裁判に至るケースもあるが、そこまで揉める原因は技術的な問題ではなく当事者同士の信頼関係の問題であろうと推察される。