(写真はイメージです/PIXTA)

不動産を親子間で安く賃貸する場合、相続税や贈与税にどのような影響を与えるでしょうか? 本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が親子間の無償の賃貸が相続税・贈与税に与える影響について解説します。

賃貸住宅は「相続税」の評価が軽減される

次に、不動産の無償での賃貸の相続税への影響について解説していきましょう。親子間の無償での賃貸について解説する前に、まずは相続税の計算における、自分で使うための不動産と賃貸用不動産との評価方法の違いを解説します。

 

■自用のマンションと賃貸マンションの相続税評価の違い

 

相続税の計算においては、自分で使っている自用マンションと賃貸に出している賃貸用マンションとでは、賃貸用マンションのほうが安く評価されます。

 

これは、他者に貸しているためにある日突然大家さんの一方的な都合のみで出て行ってもらうことは難しく、不動産の自由な利用に制限がかかっているためです。

 

マンションは相続税の計算上、建物と敷地となっている土地とに分けて計算されます。それぞれ、自用の場合と賃貸用の場合の評価の違いは、次のとおりです。

 

・貸家の評価額

 

賃貸している建物(貸家)の相続税評価額は、原則として自用の場合の評価額から借家権割合を控除して計算します。計算式は、次のとおりです。

 

◆貸家の評価額の計算方法
貸家の相続税評価額=自用建物の評価額×(1-借家権割合)

 

計算式内の「借家権割合」は、原則として30%です。たとえば、自用とした場合の評価額が2,000万円である建物を賃貸した場合、その評価額は次のようになります。

 

◆実際の計算
貸家の相続税評価額=2,000万円×(1-0.3)=1,400万円

 

・貸家建付地の評価額

 

賃貸している建物の敷地となっている土地を、「貸家建付地(かしやたてつけち)」といいます。相続税の計算上、貸家建付地の評価方法は次のとおりです。

 

◆貸家建付地の評価額

貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額-自用地評価額×借地権割合×借家権割合

 

借家権割合は、上で記載したとおり、原則として30%です。借地権割合は地域により異なり、30から90%の間(10%刻み)で定められており、国税庁が公表している路線価図などを見ることで確認することができます。

 

たとえば、借地権割合60%の地域に存在し、自用とした場合の土地の評価額が3,000万円である貸家建付地の評価額は、次のとおりです。

 

貸家建付地の相続税評価額=3,000万円-3,000万円×0.6×0.3=2,460万円

不動産を親子間で無償で賃貸…「相続税」が高くなる?

上で解説したとおり、他者に貸している不動産の相続税評価額は、自用の不動産よりも低くなります。それでは、親子間で無償や低額で賃貸をしている不動産の相続税評価額は、どのようになるのでしょうか?

 

自用のものとして評価される

 

親子間で無償や低額で賃貸をしている不動産は、自用のものとして評価されます。つまり、上で解説したような減額計算をおこなうことはできません。

 

そもそも、賃貸不動産を安く評価することができる理由は、他者に貸しているために自由な利用に制限がかかっているためです。一方、親子間で無償や低額で不動産を貸している場合には、返してほしくなったときにはいつでも返してもらうことができ、他者に貸している場合のような制限はありません。そのため、相続税の計算上減額もされないのです。

 

なお、親が10室あるアパート1棟をまるごと保有しており、そのうち1室を子が無償で使用しており、残りの9室を他人に賃貸している場合には、子に貸している部屋部分のみが自用として評価されます。

 

このアパートを自用とした場合の建物部分の評価額が8,000万円、敷地となっている土地の評価額が1億円であり、この地域の借地権割合が50%である場合の相続税評価額は、次のとおりです。

 

◆相続税評価額の計算方法

建物:8,000万円×(1-0.3×9室/10室)=5,840万円

土地:1億円-1億円×0.5×0.3×9室/10室=8,650万円

(9室/10室は、床面積で計算します。)

 

このように、自用として評価される子への無償賃貸部分以外についてのみ、賃貸による減額が適用されることとなります。

まとめ

親子間で不動産を無償や低額で賃貸する場合には、このような税金の取り扱いにも注意しましょう。また、子が複数いるにもかかわらず一部の子のみが無償で建物を借りるなどの利益を受けていた場合には、その不公平感から相続の際にトラブルの原因となってしまう可能性も否定できません。

 

無償での賃貸についての取り扱いに迷ったら、税理士や弁護士などの専門家へご相談ください。

 

 

森田 雅也

Authense法律事務所 弁護士

 

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本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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