(※写真はイメージです/PIXTA)

ニュースはもとより、世間話にもたびたび登場する「景気」というワード。一般の人が「景気が良い」というのは、儲かっている、仕事選びのチャンスが多い、といった意味合いのときが多いでしょう。しかし、みんなが感じる景気の良しあしと、実際の経済的な数値データには、しばしば乖離が見られます。なぜでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が平易に解説します。

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景気の良しあしは、政府が総合判断して決めている

景気が良いとか悪いとかいう言葉は普通に使われていますが、実は「景気」という統計はありません。景気が良いときには物がよく売れるので、企業は儲かっていることが多く、生産のために人を雇うので失業者は少ないことが多いですが、企業収益と失業率が同時に動くと決まっているわけでもありません。

 

ミクロ経済(商人等の視点からみた経済)では「景気が良い」という言葉を商売繁盛で儲かっているという意味に使う場合も多いようですが、マクロ経済(総理大臣の視点からみた経済)では、失業のほうに関心があるかもしれませんね。

 

そこで、景気というのは総合判断で政府が決めています。といっても、景気がすごく良いとか少し悪いという決め方はしていません。あくまでも、景気が「上を向いているか」「下を向いているか」という方向だけの話です。

 

景気がいちばん悪いときを「景気の谷」、いちばん良いときを「景気の山」と呼び、谷から山までは景気が上向き、山から谷では景気が下向き、というわけですね。

景気回復の初期に「増益率が高くなりやすい」ワケ

「景気の谷を過ぎたころ」というのは、景気が最悪期を脱してようやく少しずつ物が売れるようになって来るときというイメージですね。多くの人々は、景気が回復を始めたことに気づいていないかもしれません。そうしたときに、じつは企業収益の増益率が高くなって人々を驚かせることが多いのです。

 

最大の理由は、前期の利益水準が低いので、少しでも増益になると増益率が大きくなる、ということです。もうひとつ、売り上げが増えても固定費が増えないため、売り上げ増が大きく利益増加に貢献する、ということも重要です。

 

不況期には設備も労働者もヒマにしていますから、売り上げが増えても設備投資をする必要もなく、労働者を雇う必要もなく、材料を仕入れてヒマな労働者と設備機械を使って生産して販売すればいいだけです。

 

したがって、売上が増えてもコストは材料費しか増えず、その差額はすべて利益の増加になるわけです。

それどころか「コスト低下」の可能性さえあるワケ

景気回復初期は、コストが低下する可能性さえ考えられます。不況期には設備投資が行われていないので、減価償却が必要な資産が次第に減っていき、減価償却負担が景気回復初期にも前年より軽くなる場合も多いでしょう。定率法を採用していれば、減る可能性が高いでしょう。

 

借入金利も減少していくかもしれません。設備投資を行わない企業は、減価償却分だけ借入金を返済していくので、借入元本が減っていくでしょう。とくに、前回の好況期に借りた高金利の借入が返済されていくならば、利払い負担は大幅に軽くなるかもしれませんね。

 

その他、前回の公共時に仕入れた原材料を使い切って不況期に仕入れた安い原材料を使うようになるタイミングで、原材料コストが計算上下がるかもしれませんし、短期借入を借り換えている場合の借入金利も「最後の金融緩和は無駄である」といわれるのが正しければ、下がっていくかもしれません。

 

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