株やFXと比べると不利？暗号資産の税務「3つの特徴」

本記事の最初に、暗号資産による所得は雑所得に区分されると説明しました。この雑所得は株式投資やFXにかかる税金と比較してどのような特徴を持っているのでしょうか？

①所得が大きいほど税率が大きくなる累進課税

雑所得（＝暗号資産取引による所得）は総合課税の対象で、給与所得などほかの所得との合計額に課税されます。たとえば、給与所得が500万円、暗号資産による所得が200万円の場合は、2つの所得を合計した700万円となり、この金額から控除額などを差し引いた課税所得に対して課税されます。

所得額が大きくなるほど税率が上がる累進課税で、最大で45%（住民税を含めると約55%）の所得税が課されます［図表］。

［図表］所得税の速算表

_{※詳しくは国税庁『No.2260 所得税の税率』をご覧ください}

これに対し、FXによる所得や株式の譲渡による所得は申告分離課税になるため、ほかの所得金額と合計せず分離して税額を計算し、かかる税率は一律で20.315％です。

②暗号資産取引で損失が出た場合、ほかの利益と相殺できない

事業所得などで利益が出ていて、暗号資産取引で損失が発生した場合、この損失をほかの所得と相殺することはできません。給与所得を得ている会社員の方も、給与所得を雑所得の損失と相殺することはできません。

③生じた損失は翌年以降の利益と相殺できない

株式投資やFXでは、その年に生じた損失を繰り越し、翌年以降に発生した利益と相殺することができますが、暗号資産で発生した損失は翌年以降に繰り越せません。

■申告をしなかったらどうなる？海外取引所を使っている場合はバレない？

一定の利益が出ているにもかかわらず、確定申告を行わなかった場合や実際の所得よりも少ない金額で申告した場合には、加算税などのペナルティが用意されています。故意や過失に関わらず追加で税金を支払うことになってしまうため、確定申告は適切に行いましょう。

また、海外取引所を利用していれば利益が出ていてもバレないのではないかと考えている方もいるかもしれません。しかし国税・税務署は国内の取引所に対して情報提供を求めることができ、海外取引所への送金履歴などを確認できます。海外取引所での取引もある程度把握可能という認識を持っておきましょう。

また、最近では暗号資産投資家が数十人単位で税務調査を受けたとの報道もあり、暗号資産投資家に対する申告漏れの監視が強化されていることがわかります。

■暗号資産の確定申告は煩雑。余裕を持って準備する必要がある

株式投資では特定口座（源泉徴収あり）を利用していれば、取引によって発生した利益が自動計算され、証券会社が税金を源泉徴収して納税するため、確定申告をする必要がありません。しかし暗号資産投資では、取引によって発生した利益の計算から確定申告書の作成・提出まで、すべて自分で行う必要があります。

複数の取引所を利用している場合は利益の計算が複雑になり、取引所から発行される取引報告書や損益報告書では正確な利益を計算することが難しくなります。Gtaxのような損益計算ツールを利用したり、税理士に依頼したりするなど、確定申告には一定の手間と費用がかかる場合があることを把握しておきましょう。

■まとめ

今回は、暗号資産にかかる税金について解説しました。税金は投資する上で無視できないものなので、ある程度制度を理解し、一定の利益が出たら適切に確定申告をする必要があります。

まずは確定申告の検討ラインである「20万円」の利益が出ているかを確認することから始めていきましょう。上記で説明したように、取引によって生じた利益の計算や確定申告には一定の手間と時間がかかるため、1月中に動き始めることをおすすめします。

次回は暗号資産の確定申告の流れを解説していきます。
 

沼澤 健人

株式会社Aerial Partners　CEO