(※写真はイメージです/PIXTA)

1991年のバブル崩壊後、長らく経済の落ち込みを見せていた日本。しかし、2021年の首都圏における新築マンションの平均販売価格は1戸当たり6,750万円と、平成バブル期の6,123万円を超えて過去最高を記録するなど、足元の不動産市況には過熱感がみられます。この「平成バブル超え」の実態について、不動産鑑定士として1980年代後半から始まった昭和・平成のバブル期を経験した三浦氏が、当時の状況と比較しながら解説します。

バブルは円高不況による金融緩和政策から始まった

現在、イールドギャップ>長期金利(10年物国債利回り)の状態が続いていますが、マーケットの取引利回りは下限を示しているようです。長期金利の動向によっては矢印が反転するリスクを含んでいます。

 

バブル期でも、「金利を考えると、今の物件価格では採算は合わないよね」といわれていたことを思い出します。

 

3年ほど前からバブル期を経験した不動産鑑定士の間で「今、バブルじゃないの?」と言われるようになりました。コロナ禍でオフィスや店舗賃料の下落はみられるものの、全体的に不動産マーケットの過熱感は続いています。

 

バブル期を振り返ると、1985年(昭60)のプラザ合意による「円高不況」で、それを和らげるために政府が金融緩和政策を続けました。

 

その結果、株式や土地への投機が始まり、不動産バブルを引き起こしました。

 

当時「土地は誰のものか」と社会問題化するまでに至り、1990年(平2)に、不動産価格の高騰を抑えるため、財務省(旧大蔵省)が金融機関に対する「総量規制」を実施しました。

 

総量規制とは、「不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える」という制限です。

世界経済はインフレ傾向…日銀の動きに注目

中国では、2021年(令3)1月から、金融当局が「3つのレッドライン」と呼ばれる融資規制を実施しました。

 

恒大集団の破綻は1年前から指摘されていましたが、同年9月の恒大集団の子会社が発行した満期金融商品が支払われず、その支払を求めた投資家たちの抗議が海外マスメディアで取り上げられ表面化しました。

 

バブル期では、「東京23区の地価でアメリカ全土を購入できる」と言われましたし、中国でも「北京の土地を売ればアメリカも手に入る。上海も加えれば日独仏英も買える」と言われていたそうです。バブルではいずこも同じようです。

 

現在、世界経済はインフレ傾向にあります。英国は既に利上げを実施し、米国FRBの今年3月のテーパリング終了に伴う利上げ観測が強まっています。当然、日銀の動向に目が離せません。

 

日銀の台所をみると、2012年(平24)には、社債や金銭信託を含む民間の資産購入額が6兆円でしたが、2021年(令3)12月には49兆円の約8倍に、当座預金は140兆円から538兆円の約4倍に膨らむなど、資金はじゃぶじゃぶの状態です。

 

日銀に目立った動きはありません。「バブル崩壊の犯人は日銀だ」と陰で言われてきましたので、そのトラウマがあるのではないかと疑いたくなります。

 

日本も食料品等の値上げが始まりインフレ傾向に入ったと判断されますので、ますます日銀の動向から目が離せません。

 

不動産と金融との結びつきは極めて強いと改めて実感しています。

 

 

三浦 雅文

不動産鑑定士

 

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