(※画像はイメージです/PIXTA)

「温泉権」とは、温泉を引く・掘る際に必要な権利で、日本国内に無数にある温泉地の宿泊施設等では、この権利によって温泉を引き、ビジネスを展開しています。ところが不思議なことに、法律の文面にはこの「温泉権」についての記載は一切登場しません。果たして「温泉権」とはどのような成り立ちの権利なのでしょうか。ホテル・旅館業を専門に扱う弁護士の佐山洸二郎氏が解説します。

有名温泉地で使われている「引湯権」という考え方

実際に各地の温泉地の状況を見てみると、地下から湧き出ている温泉の温泉権は、その地域のホテルや旅館など、その温泉を提供している施設の経営者が共同でその温泉を使える権利を共有しており、温泉権とは別に、その温泉から必要な分だけお湯を引く「引湯権」という権利を個別に持っている、というケースが多いようです。

 

有名な温泉地では、その温泉地の所在地の各都道府県によって、温泉自体に関する物理学的な調査をはじめ、その地方の伝統や慣習などを踏まえ、「慣習法」の慣習部分を詳細に調査している場合もあり、調査結果をまとめた「調査書」がある地域も少なくありません。

 

この「調査書」はネット検索による閲覧可能で、大分県や神奈川県といった有名な温泉地にはかなり詳細な調査書があるほか、過去数十年分にわたって閲覧することもできます。

法律で決められている「温泉」の定義とは?

ここまで温泉について解説してきましたが、そもそも「温泉」とはどんなものなのでしょうか。温泉には明確な定義があります。地中から出てきた温水などであって、「25度以上、または総硫黄、遊離炭酸などが一定以上含まれているもの」と定められています(環境省「温泉の定義」https://www.env.go.jp/nature/onsen/point/)。

 

具体的には、地中から出てきた温水などで、入浴によって健康増進効果が得られる、お湯にとろみがあって肌あたりがいい、炭酸等による程よい刺激を感じる…など、普通のお湯より気持ちよく感じる要素となる物質(硫黄、炭酸水素ナトリウム等)が一定以上含まれている、温度が25度以上であれば、晴れて温泉を名乗れる、ということになります。

実際に温泉を引くために必要な「3つのステップ」

実際に温泉を引くためには、温泉権や引湯権さえ持っていればOKというわけではなく、これらの権利を持っていることに加え、各都道府県知事、つまりは地域の役所の許可を得ることが必要となります。

 

そのため、温泉引く際には、

 

①その土地・その地域の温泉権の慣習などを調査

②温泉を引く権利である「温泉権」「引湯権」を取得

③温泉を引く地方の都道府県知事の許可を得る

 

という3つのステップが必要になります。

温泉ビジネスを考えている人のための、温泉権のまとめ

温泉を活用したビジネスを検討されている方は、下記3つの項目について、あらためてしっかり確認しておきましょう。

 

●「温泉権」「引湯権」は、温泉を掘ったり引いたりすることができる権利のことである

 

●「温泉権」という権利は、温泉法をはじめとした法律では明確に定められておらず、それぞれの地方の伝統や慣習、これまでの長い歴史での取り扱い方が決まる「慣習法」の一種とされる場合が多い

 

●実際に温泉を引くには、温泉権もしくは引湯権を保有していることに加え、その地方の都道府県知事の許可を得る必要がある

 

 

佐山 洸二郎
弁護士法人横浜パートナー法律事務所

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