相続税申告の遺産の時価の評価方法
相続税を申告するときの遺産の時価(相続税評価額)は、財産評価基本通達で定められた方法で求めます。
預貯金であれば、故人の死亡日時点の残高が相続税評価額となります。定期預金は未経過利息(まだ受け取っていない利息)も含めて評価しますが、元金の相続税評価額は実際の残高と同額です。
一方、不動産のように一つ一つ状況が異なり二つとして同じものがない財産や、株式のように日々価格が変動する財産の相続税評価額は実際の時価と異なる価額になります。
また、書画骨董のように価値がすぐにわからないものについては、専門家の鑑定によって時価を評価します。
宅地・家屋の相続税評価額
財産評価基本通達では、宅地・家屋について次の方法で評価するよう定められています。
- 宅地:路線価または固定資産税評価額をもとに評価
- 家屋:固定資産税評価額と同額
路線価とは、主に市街地で相続税評価のために定められた1m2あたりの地価のことです。路線価がある地域では、評価する土地の面する道路ごとにつけられた路線価に面積をかけて評価します。路線価がない地域では、宅地の固定資産税評価額に所定の倍率をかけて評価します。
宅地・家屋を賃貸している場合は、借地人・借家人の権利にあたる部分を差し引くため、賃貸していない場合に比べて評価額は低くなります。
宅地・家屋の相続税評価額は、多くの場合実際の時価より低くなります。そのため、現預金を不動産に組み替える節税対策が広く行われています。
有価証券の相続税評価額
株式など有価証券についても、財産評価基本通達で評価方法が定められています。
- 上場株式:被相続人の死亡日の終値または一定期間の終値の平均値をもとに評価
- 非上場株式:会社の財務状況または配当をもとに評価
- 投資信託:被相続人の死亡日に解約したと仮定した場合の払戻金額で評価
上場株式の相続税評価額は、基本的には死亡日の時点の証券取引市場の終値に株数をかけて評価します。ただし、死亡日の月、その前月、前々月における終値の平均値でも評価することが認められ、死亡日時点の終値も含めて最も低い株価をもとに評価します。
株価は会社の業績や内外の経済情勢によって大きく変動することがあり、上場株式の相続税評価額は実際の時価と異なる価額になる場合もあります。
オーナー企業の株式など非上場株式には、時価として利用できる市場価格はありません。非上場株式の相続税評価額は、会社の財務状況や配当をもとに評価する必要があります。株式を相続して大株主になる場合は、会社の財務状況をもとに株価を評価します。少数株主や経営者一族以外など経営への関与が低い場合は、配当の額をもとに株価を評価します。
投資信託の相続税評価額は、死亡日に解約したと仮定した場合の払戻金額で評価します。ただし、上場投資信託(ETF)は上場株式と同じ方法で評価します。
その他の財産の相続税評価額
現預金、宅地・家屋、有価証券以外の財産も、価値を評価して相続財産として申告する必要があります。
書画骨董、貴金属・宝石の価額は、販売実例価格や専門家の鑑定結果をもとに評価します。
自動車の価額は、死亡日時点の取引価格で評価します。取引価格は、中古車販売業者のインターネットサイトなどで調べることができます。取引価格を調べることができない場合は、死亡日の時点の同種の新車の販売価格から定率法による償却費を差し引いて評価することもできます。年式が古く中古車市場でも取引されていないような車であれば、0円で評価することもあります。
ゴルフ会員権の価額は、死亡日時点の取引相場の70%で評価します。預託金の返還がある場合にはその金額を加算します。取引相場の金額は、新聞広告やゴルフ会員権取引業者のインターネットサイトなどで調べることができます。