税務申告で申告ミスや不正を疑われた場合、税務調査が入ることがあります。突然やってきた調査官に帳簿などの資料を求められたら、こちらに落ち度がなくても戸惑ってしまったり、焦ったりするものです。普段からできる対策をみていきましょう。

不動産関連で税務調査に入られやすいケース

不動産関連で税務調査が入るケースとしてよくあるのが、相続です。先代から不動産を相続して相続税の申告をすると、その内容を厳しくチェックされることがあります。

 

なぜなら、相続税は税率が高いうえに申告内容に不備があることが多いからです。平たく言えば、税務当局にとって相続税は「税務調査のコストパフォーマンスが高い」ということなのでしょう。

 

不動産投資の場合、毎年の申告内容にそれほど大きな違いはありません。物件が増減したとしても収益構造に大きな違いはないので、申告内容に劇的な変化は起きにくいと認識されています。

 

そんな不動産投資において、今年だけ計上している経費が多いといった「異常計数」が見られると、税務調査の対象になりやすくなります。

税務署は「どこに」ポイントを絞って調査しているのか

調査を受けた会社のうち、誤りを指摘されるのは約7割で、不正計算(脱税)を指摘されるのは約3割です。ただ、税務調査が入ったとしても、不正をしていないのであれば何も恐れることはありません。調査に対応するのが不安ならば、税理士に立ち会ってもらうことをお勧めします。

 

ところで、税務署はなにを調べに来るのでしょうか。短時間で過去1~3年分の会計資料をチェックするのですから、彼らなりにポイントを絞ってきます。

 

必ずチェックされるのは、「交際費」と「売上」

まず、必ずチェックされるのが交際費でしょう。交際費に計上されているお金が、不動産投資と本当に関係があるのかどうかです。不動産投資で、飲食や物品提供を伴う交際はあまり多くないはずなので、あまりにも多いと怪しまれます。また、身内に人件費を出している場合、雇用実態がなければ厳しく指摘されるでしょう。

 

売上の計上漏れを指摘されることもあります。当然ながら、売上が少ないと納税額は少なくなります。家賃を滞納されて入金がなかった場合、売上に計上しなくてもいいと考えるオーナーもいますが、それは誤りで滞納があったとしても計上しなくてはなりません。

 

家賃回収の見込みが立たなくなったときには「貸倒損失」として費用計上できますが、要件はかなり厳しいため小規模経営の場合はあまり現実的ではありません。

 

このほか、売上の計上時期を間違えたり操作したりしていないか、減価償却費のもととなる土地と建物の価格割合について書類上で確認ができるかなどがチェックされます。

 

収益の計上漏れはないか

収益の計上漏れは、それが故意であると所得隠しを疑われてしまいます。不動産投資の場合は家賃収入がほぼ全てで、その他にあるとすれば売却益まででしょう。そのため計上漏れは起きにくいですが、注意したいのは先ほど述べた家賃の滞納分の取り扱いです。

 

もちろん、空室時には家賃収入が発生しないので、無収入の分については収益として計上する必要はありません。

 

経費や消費税の処理は適切か

経費や消費税の処理についても税務調査の対象項目ですが、特に目を光らせているのが経費です。経費は多く計上するほど利益を少なくすることができるため、税額も低くなります。

 

そのため不動産投資家は可能な限り経費を多く計上したいところですが、それが行き過ぎると税務調査のリスクを高めます。

 

個人で不動産投資を行っている場合、不動産事業のために要した経費なのか、生活に必要な経費であったのかの線引きが曖昧になりがちです。

 

国税庁は「業務遂行上必要であったことが明らかに区分できる金額」を経費と認めているため、この曖昧さを利用して不動産投資と無関係の経費を多く計上すると税務調査の対象になります。

 

敷金や保証金の償却処理が正しく行われているか

敷金や保証金のうち、入居者に返還しない分はオーナーの取り分になります。つまり、これも収入の一部です。賃貸契約書に敷金や保証金についての記載があると思いますが、契約書で返還すると記載していない分については収入として計上しないと、計上漏れになってしまいます。

 

契約書類はきちんと締結されているか

オーナーと入居者との間でやり取りされる金銭について、それを証明するための契約書が交わされているかもチェック対象になることがあります。というのも、契約内容が書面になっていない口約束だと家賃がいくらなのか、どれだけの収入があるのかが判然としないからです。

 

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本連載は、リズム株式会社が発信する「不動産コラム」の記事を転載・再編集したものです。

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