(写真はイメージです/PIXTA)

Authense法律事務所のもとには、さまざまな相続に関する相談が届きます。今回は、「長男にすべての遺産を譲る」と書かれた遺言書が生んだトラブルについて、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

子どもや配偶者の遺産を守る「遺留分」とは

今回の相談でC夫さんの弟のDさんは、「遺留分」について主張していました。そもそも遺留分とはなにか、遺留分を請求できるケースなどについて、詳しく解説します。

 

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。遺留分が特に重要になるのは、不公平な遺言書が遺されたケースです。

 

今回のケースでも当てはまるように、遺言により「長男にすべての遺産を相続させる」「愛人にすべての財産を遺贈する」など、特定の人に全部あるいは多くの遺産が遺贈されたり相続分として指定されたりした場合を考えてみてください。

 

他の相続人は遺産をほとんど受け取れなくなってしまい、不満を持つでしょう。子どもや配偶者であるにもかかわらず遺産を受け取れないと「できるだけ近い親族に遺産を分け与える」ことを目的とした法定相続人制度の趣旨にも合いません。

 

そこで民法は一定範囲の近しい相続人に、最低限の遺産取得分として「遺留分」(民法第1042条等)を保障しているのです。

 

兄弟姉妹以外の法定相続人は、遺言によって遺留分を侵害されたら侵害者へ「遺留分侵害額請求」(民法第1046条第1項)を行い、侵害された遺留分を取り戻せます。

遺留分が認められる相続人

遺留分が認められる相続人は「兄弟姉妹以外の相続人」です(民法第1042条第1項参照)。具体的には以下の人が該当します。

 

【配偶者】

 

夫や妻には遺留分が認められます。内縁の配偶者には相続権がないので、遺留分も認められません。

 

【子ども、孫などの直系卑属】

 

子どもには遺留分が認められます。子どもが親より先に死亡したため孫が代襲相続する場合、孫も先に亡くなっていてひ孫が再代襲相続する場合には、孫やひ孫に遺留分が認められます。

 

【親、祖父母などの直系尊属】

 

親にも遺留分が認められます。両親ともに先に亡くなっていたら祖父母、祖父母も先になくなっていたら曾祖父母が相続しますが、その場合の祖父母や曾祖父母にも遺留分が保障されます。

遺留分が認められない相続人

以下の相続人には遺留分が認められません。

 

【兄弟姉妹、甥姪】

 

兄弟姉妹やその代襲相続人である甥姪には遺留分がありません。

 

【相続放棄した人】

 

子どもや配偶者などの相続人であっても相続放棄したら相続権を失い、遺留分も認められなくなります。

 

【相続欠格者、相続廃除された人】

 

相続欠格者や相続廃除された人にも遺留分が認められません。ただし相続欠格者や相続廃除された人の子どもや孫が代襲相続(再代襲相続)するときには、遺留分が認められます。

 

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