(写真はイメージです/PIXTA)

Authense法律事務所のもとには、さまざまな相続に関する相談が届きます。今回は、「長男にすべての遺産を譲る」と書かれた遺言書が生んだトラブルについて、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

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遺産はすべて長男に…遺言書が生んだ兄弟の確執

【トラブルの背景】

 

60代男性のC夫さんのお父さんが亡くなりました。お母さんと長男であるC夫さん、次男のDさんの3人が相続人となりましたが、お父さんは「遺産はすべてC夫さんに譲る」との遺言書を遺していました。

 

遺言通り、遺産を処理しようと進めていましたが、ある日突然、弟であるDさんがC夫さんを訴えたとの書類が届き、びっくりしてしまいます。

 

Dさんは「遺産の1/8は遺留分でもらえるはず。加えて、今は生きている母親が亡くなったときに発生する遺留分も支払って欲しい」と主張してきました。

 

母親の介護費用などを考えると、C夫さんはDさんの主張を素直に受け入れることはできませんでした。

 

【解決までの流れ】

 

相談を受けた弁護士は、できるだけC夫さんが支払う遺留分の侵害額を減額することに注力。相続した不動産を鑑定に出し、相手方が出してきた不動産評価額より1,000万円安く抑えました。
 

今回のケースでポイントとなったのは、80代の母親が認知症を患っていたことです。相手方である弟のDさんは、母親が亡くなったときに相続できる母親の遺留分侵害額請求権についても合わせて支払ってほしいと主張していました。

 

母親の遺留分は1/4なので、さらにそれをDさんがその1/2を相続すると考えると、Dさん自身の遺留分とあわせて2/8となり、Dさんの請求額は2倍となります。

 

この遺留分については、「相続が発生したと認識した時点から1年」という時効がありますが、お母さんは認知症のため認識することができず、時効となりません。

 

しかし、認識してもしなくても、相続発生から10年経ったら否応なしに時効となります。もしも、お母さんが10年生存したらDさんは遺留分を請求できなくなってしまうのです。

 

そこで、「お母さんの遺留分についても、ある程度は支払う」「その代わり、2倍の全額というのは勘弁して欲しい」と交渉しました。

 

その結果、2倍という先方の主張を約1.4倍まで減額。さらに、お母さんが亡くなった際にも、Dさんは遺留分の請求はしないとの条項を入れて解決しました。

 

【結果・解決ポイント】

 

C夫さんとDさんは以前からあまり兄弟仲は良くなく、疎遠になっていました。そのため、Dさんは相続が発生したと見るや、事前の相談や交渉なしに、突然裁判を提起したのです。

 

突然のことに、当初は混乱していたC夫さんでしたが、話を丁寧に伺い、今後の展望や対応策などを打ち合わせていく中で精神的にも落ち着いていき、無事、希望に近い解決へと着地することができました。

 

相談から和解が成立するまでの期間は4カ月。相手方とは4回目の交渉で解決したのです。
 

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