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日本政府は、労働力不足解消のために外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切る模様です。しかし、現在の労働力不足が起きている背景をよく考えれば、安易な外国人労働者の受け入れが解決策にならないことは明らかです。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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      労働力は、余っているより「足りない」ほうが望ましい

      そもそも労働力は、余っているより足りないほうが望ましいのです。労働力が余っているということは失業者が発生しているということですから、失業対策が必要になりますし、そもそも失業者は生活の不安に加えて「自分は世の中で必要とされていないのではないか」といった不安さえ持ちかねないわけです。

       

      一方で、労働力不足であれば、非正規労働者の時給が上がります。非正規労働者のなかには正社員になりたくてもなれずに非正規労働者として生計を立てている「ワーキング・プア」と呼ばれる人も多いわけで、彼らの時給が上がって正社員の待遇に少しでも近づくことは望ましいというべきでしょう。

       

      それによって店が人件費を売値に転嫁し、我々が高い値段を払わされたとしても、筆者は喜んで支払うつもりです。

       

      もうひとつ、労働力不足のいいところは、企業が省力化投資に励むインセンティブとなり、日本経済が全体として効率的になるということです。日本経済の労働生産性は低いといわれていますが、それが修正されていくわけですね。

       

      そもそも日本経済の労働生産性が低い一因は、長期にわたる不況のあいだ、安い時給で皿洗いの労働者が雇えたために、飲食店が自動食器洗い機を購入しなかったことにあります。労働力不足によって飲食店が自動食器洗い機を購入するようになり、日本経済の生産性が向上していくならば、それは素晴らしいことでしょう。

      農業労働者が足りなければ、農産物を輸入しよう

      農業分野の労働力不足に対処するため、農業分野でも外国人労働者の受け入れが拡大されそうです。しかし、農業労働者が足りないのであれば、農産物を輸入すればいいのです。

       

      外国の広い土地で生産された農産物を安価に輸入すれば日本人の消費者は嬉しいですし、外国人労働者も日本に来ることなく、自国で農作業をして所得が得られるわけですから。

       

      日本は農産物の輸入を制限していますが、それは「農産物を輸入すると国内の農業労働者が失業してしまうから」という理由ですね。農業労働者が足りないならば、輸入制限を撤廃すればいいだけの話でしょう。

       

      それによって食料安全保障が脅かされるというレベルの話ではないでしょうし、貿易収支や経常収支が赤字になって困ったことが起きるとも思われません。農業以外の産業についても、輸入すればすむような製品については、外国人労働力を受け入れるのではなく、製品を輸入する方向で対処してほしいものです。

       

      今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

       

      筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

       

       

      塚崎 公義
      経済評論家

       

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