本連載では、大手企業の「グローバル節税スキーム」について実例を挙げて紹介していきます。大企業の多くは世界各国の税制を研究し、様々なタックスプランニングを実践しているのです。

税率が低い国へと本社を移す大企業たち

2009年9月、世界最大の経営コンサルティング企業として知られるアクセンチュアが、本社をバミューダからアイルランドに移転しました。アクセンチュアといえば、誰もが米国の企業とイメージするのではないかと思います。その本社がバミューダにあったというだけでも驚きですが、さらにアイルランドへ移動したのです。

 

これはバラク・オバマ政権登場による米国企業のタックス・ヘイブン利用規制の厳格化、さらに米国とバミューダ間に租税条約がないことの税務上リスクを回避するためでした。アクセンチュアの事実上の本社業務はシカゴとニューヨークで行われています。アイルランドは本社所在地という意味しか持ちません。いうまでもありませんが、これはグローバル節税の代表的手法なのです。

 

実際、ほかにも米国企業のタイコ、フォスター・ウィーラーなども同様に、2008年末にはバミューダでの本店登記をスイスに移転しています。

 

イギリスでは、米食品最大手クラフトに買収されたキャドバリーが、本社をチューリッヒに移転しています。英国法人からスイス法人への転換により、2010年当時の英国の法人税率28%がスイスの法人税率8%へと変わりました。その結果、毎年6000万ポンド(約102億円)の削減が実現。クラフトは2006年以来、チューリッヒに持株会社をつくり、ヨーロッパ各国の会社をその傘下に置く組織再編成を進めていました。このキャドバリーの移転もその一環だったのです。

本社所在地移転の狙いは何か?

また、最終的には失敗に終わりましたが、直近の米国企業による英国企業のM&A事例があります。これは2014年の米製薬最大手ファイザーによる英アストラゼネカの買収提案です。これが成功していれば、合併後のファイザーはイギリス法人となり、米国法人の税率35%から英国の21%に下がったはずでした。

 

さらにこのプランには、法人税率軽減以外にも大きなメリットがありました。米国には日本の海外子会社配当免税に類する措置がないため、グローバル企業は海外で得た利益を莫大な税金なしには米国に持ち込めません。そこでファイザーは海外にプールしている690億USドル(約7兆2000億円)もの資金を、課税なしで持ち込めるイギリスに本拠地を移動させたうえで還流させることを考えていたのです。

 

こうした税務マネジメントを本連載では「グローバル節税」と称し、それがどのように行われているのか、またどうすれば自分たちにも活用できるのかを解説していきます。

 

それでは、次回より海外企業によるグローバル節税スキームの一端を紹介していきましょう。

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    本連載は、2014年10月1日刊行の書籍『究極のグローバル節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

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