(写真はイメージです/PIXTA)

亡くなった被相続人が貸金庫を利用していた場合の相続手続きについて、行政書士法人ストレートの大槻卓也行政書士が解説します。

相続人の一部に借主の地位を承継

相続人に借主の地位を承継させる上で、トラブル回避のためにやっておきたいこととは何でしょうか? 貸金庫の開閉権について説明しましょう。

 

遺言で遺言執行者に貸金庫の開閉権を付与するのが望ましい

 

共同相続人間で、相続人の一部の人に借主の地位を承継させる旨の合意が成立している場合には、一部の人に貸金庫上の権利義務が承継されるため、一部の人が開庫することも可能となります。また、遺言執行者には貸金庫開扉請求権があるか、という点が争いになっています。

 

一切の財産を相続させるとの遺言がある場合、貸金庫契約に基づく貸金庫開扉請求権は、相続財産に含まれるのであって、相続開始と同時に相続人に帰属し、遺言執行者がある場合でも原則として遺言執行者は開扉請求権を有しないとする裁判例があります。他方、包括遺贈の場合に、遺言執行者には貸金庫の開閉権があるとする裁判例もあります。

 

争いを避けるために、遺言書で遺言執行者に権限を付与しておくのが望ましいでしょう。

 

共同相続における権利の承継の対抗要件

 

承継される権利が債権である場合には、相続分を超えて債権を承継した共同相続人は、債権にかかる遺言内容ないしは遺産分割の内容を債務者に明らかにして、債務者に承継の通知をした時、対抗要件を備えたことになります。

貸金庫契約の解約手続きは相続人全員で行う

もともと貸金庫契約では、借主本人の利用を前提としています。金融機関からすれば相続人が継続して利用することは本来予定されていません。相続人側でも、継続して貸金庫を利用する利益は乏しい場合がほとんどでしょう。

 

そのような場合、貸金庫契約の権利義務を承継した相続人全員で、貸金庫の解約書を提出し解約をすることになります。

 

利用者死亡の場合、金融機関、相続人双方とも継続した利用を予定していないため、多くの金融機関では、利用者死亡によって貸金庫の解約をする内容の相続手続になっているようです。

 

■参考判例

遺言者は、一切の財産を相続人に相続させる旨の遺言をしており、貸金庫契約に基づく貸金庫開扉請求権は、相続財産に含まれるのであって、相続開始と同時に相続人に帰属し、遺言執行者がある場合でも、遺言書に当該財産の管理を遺言執行の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情がない限り、遺言執行者は当該財産を管理する権限を有しないとした事例。

貸金庫の中身も相続税の対象となる

相続税は被相続人の所有していたものすべてに掛かります。したがって、相続財産貸金庫の中に入っている財産も相続税の対象となります。

 

「貸金庫に入れておけば財産の存在はばれないのでは?」と思われるかもしれませんが、貸金庫は税務調査の定番であるため、隠すことは不可能だといえます。

 

相続人が貸金庫の存在自体を知らなかった場合もあるので、相続税の申告漏れが起きないよう、貸金庫の有無と中身については早めに確認するといいでしょう。

貸金庫に相続財産がある場合の相続手続きまとめ

  • 貸金庫上の権利義務も相続の対象となり、銀行に相続手続依頼書を提出する
  • 相続人の一部に借主の地位を承継させる場合、遺産分割を行う
  • 解約も原則全員で行う

 

 

大槻 卓也

行政書士法人ストレート 代表行政書士

 

 

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本記事は行政書士法人ストレートのコラムを転載したものです。

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