(※画像はイメージです/PIXTA)

受験生のいる家庭では、模試の結果と偏差値表を見比べていい学校選びをしていることでしょう。ただし、偏差値が高いからといって“いい学校”とは限りません。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が明らかにします。※本連載は安浪京子氏、おおたとしまさ氏の著書『中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

複数回の入試の学校は一番低い偏差値を見る

首都圏には約300の私立中学校があります。そして首都圏の中学入試回数はのべ約1200回だといわれています。1校あたり平均約4回の入試を実施している計算です。

 

たとえば200人募集する場合、100人、50人、30人、20人と4回の入試で募集したりするのです。1つの学校でも複数回の入試を行う場合、「1回目入試」、「2回目入試」などと呼ばれます。それぞれの入試の機会を中学受験業界では「入試回」と呼びます。

 

A中学の1回目入試は偏差値60だけれど、2回目入試は63というように、同じ学校でも入試回ごとに難易度が変わります。たとえば東京と神奈川では2月1日から中学入試解禁日なので、2月1日にはたくさんの入試が実施されます。それだけ人気が分散し、1校あたりの入試難易度は低く出る傾向にあります。逆に競合校が少ない日程では人気が集中しやすく、入試難易度が高くなる傾向があります。

 

さらに昨今は、一部の学校による悪質な偏差値操作が行われているらしいことが、業界では周知の事実となっています。

 

前述の例のように、たとえば1学年200人を募集する中学で、計4回の入試を行うとします。平均すれば1回の入試で50人ずつ合格を出せばいいはずですが、そこに傾斜をつけます。

 

たとえば2回目の入試を「特進入試」などと名づけて合格人数を極端に絞ります。そこで意図的に、たとえば偏差値60以上相当の学力をもっていると思われる受験生のみに合格を出せば、その学校のその入試回の偏差値は確実に60以上になります。

 

驚くのはここからです。その2回目入試で不合格を出した受験生たちに対し、何度受けても受験料は一律という制度を用意して、3回目入試、4回目入試を受けるように誘導します。そこで合格を出し、入学者数を確保するのです。

 

すると、2回目入試だけ偏差値60以上の高い偏差値がついて、そのほか3回分の入試ではそれよりも低い偏差値がつくことになります。そして2回目入試で合格した高偏差値の受験生たちが実際にはほかの学校に進学してしまうというケースも少なくないのです。見た目の合格者偏差値と実際の入学者偏差値に乖離が生じます。

 

でもメディアは、「○×中学の2回目入試で偏差値が急上昇!」などと、偏差値の高いところに注目します。それであたかもその中学の人気が急上昇したように見えてしまうのです。そこから行列が行列を呼ぶ法則で、ほかの入試回の偏差値も上がっていくということが実際にあります。

 

このような偏差値は、意図的に膨らまされた「バブル偏差値」と呼んでいいと思います。ふたたびラーメン店にたとえるならば、一時的に意図的につくられた行列です。長い年月をかけて地道に評判を勝ちとってきた老舗の行列とは意味合いがちがいます。

 

バブル偏差値にだまされないようにするためには、偏差値一覧を見るときに、各学校のいちばん高い偏差値を見るのではなく、いちばん低い偏差値に注目することです。それが実際の入学者の学力層をもっとも正確に表しています。

 

Pointまとめ
● 学校の偏差値はラーメン店の行列のようなもので、あてにはならない。
●「バブル偏差値」にご用心。
● 同じ学校が複数回の入試を実施している場合、いちばん低い偏差値を見る。

 

おおた としまさ
教育ジャーナリスト

 

 

中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール

中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール

安浪 京子 おおた としまさ

大和書房

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